講座詳細
ワイオラ教会とモクウラ
カメハメハ大王妃など王族も眠る、マウイ島最古のキリスト教会
- マウイ島最古のキリスト教会
- カメハメハ大王の妻、娘などが眠る王家の霊廟がある
- 教会裏手の地区モクウラは以前、王族が暮らしたマウイ島指折りの聖地
ハワイ王族の霊廟としてまず頭に浮かぶのはホノルルにあるロイヤル・モザリアムですが、マウイ島ラハイナにも、小規模ながら王族の霊廟が存在します。カメハメハ大王の妃や娘など大変高貴な人々が眠るこの霊廟が置かれているのが、マウイ島最古のキリスト教会、ワイオラ教会です。
ワイオラ教会が建てられたのは1823年。ハワイ島に初のアメリカ人宣教師が上陸してから、 3年後のことでした。教会のある土地は古来マウイ島王族の居住地であり、マウイ指折りの聖地でもありました(詳しくは後述)。マウイ島出身でカメハメハ大王の妻だったケオプオラニ王妃が、土地の一部を宣教師に寄贈し、マウイ島のキリスト教会の第1号として、この教会が建てられたのでした。
初めは藁葺きのごく簡素な建物が礼拝堂として使われ、当初はワイオラではなくエブニーザー教会と呼ばれていました。その後強風や火事で何度も破壊されては再建され、名称もエブニーザーからワイネエ教会、ワイオラ教会と変遷。そのためワイオラ教会の墓所は、今もワイネエ墓地と呼ばれています。ちなみに現在の礼拝堂が建てられたのは、1953年のことでした。
王族の霊廟には5人の王族が眠る
しかしワイオラ教会の歴史的価値は、礼拝堂そのものより、むしろ王族が眠る墓地にあるといえます。墓地の一角が王家の霊廟として黒とゴールドの柵で囲まれ、そこには前述のケオプオラニ王妃やその娘のナヒエナエナ王女、カウアイ島の最後の首長カウムアリイ、カメハメハ大王の孫だったケカウオノヒヌイ、マウイの大酋長カへキリの孫であるリリハが埋葬されています。
カウムアリイの墓碑
主要な3人について説明すると、ケオプオラニ女王はカメハメハ大王の妃のうち最高位にあった女性で、カメハメハ2世、3世の母。またナヒエナエナ王女は、当時の慣習に従い兄カメハメハ3世と結婚しましたが出産後に死去したという、悲劇の王女です。カウムアリイはカウアイ島の首長。「自分の死後はカウアイ島をカメハメハ大王に進呈する」との協定を大王と締結し、カウアイ島の独立を守りましたが、大王の死後オアフ島に連れ去られ、一度もカウアイ島に戻ることなく亡くなっています(カウムアリイがなぜマウイ島に葬られているのか、詳細は不明です)。
教会の日曜礼拝(朝9時)の際は、霊廟の周りに王朝時代のユニフォームを着けたロイヤルガード(王国警備隊)が配置され、これらの王族に敬意を示し、霊廟を守るとか。霊廟の外にも、カメハメハ大王の近臣で親友だった王族ホオピリなど、歴史に名を残す人々の墓があります。
なお教会裏手の土地は古来、マウイ島を代表する聖地でした。その昔は大きな池が広がり、タロ畑や養魚池があり、池の中心にはモクウラと呼ばれる小島がありました。モクウラには14世紀以来、マウイの首長の住居があったことがわかっており、カメハメハ大王がマウイを征服した後は、大王や2世、3世の住居にもなっていました。同時に王族の埋葬所でもあり、霊廟に眠る王族は、以前はモクウラに葬られていたとか。そんなことからモクウラは、ハワイ王国時代のマウイの中心地とみなされています。
モクウラ周辺は今、埋め立てられ野球場を含む公園になっていますが、近年は聖地の復興運動が盛んになり、発掘作業がスタート。これまで王族用のカヌー発着場跡や遺物が発掘されており、地下で海に流れ続けている泉の湧き水をこの地に戻し池を再現しようとのプロジェクトが、現在進行中です。
所在地: 535 Wainee Street, Lahaina
電話番号: 808-661-4349
ホームページ:http://www.waiolachurch.org
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森出 じゅんJun Moride担当講師
【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex