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2017.10.27

山鳥2(ネネ、チャッカー、他)

ネネ

かつてネズミ退治の目的でインディアン・マングースを導入しました。しかしマングースは昼行性なのに対し、ネズミは夜行性なので、マングースはつねに餌に不足していました。一方、ネネは地面に卵を産むなど、地上での生活が主体です。この習性は、マングースにとっては好都合でした。手間のかかる親鳥ではなく、卵を狙いうちしたのです。その結果、1940年代には個体数がわずか50羽と絶滅の危機に瀕しました。

残念ながら野生のネネは1951年に絶滅しました。しかし個人が約30羽を飼育していたため、この群れから繁殖をして今日に至ります。現在では2000羽とも3000羽とも言われるほど生息数が増えています。ネネはカウアイ島ではワイメア渓谷のコケエ周辺をはじめ、ハワイ島のマウナ・ロア山麓やキラウエア周辺、フアラライ山の山麓などに見られます。マウイ島ではハレアカラ周辺、オアフ島ではワイメア植物園やホノルル動物園などで飼育されています。

解き放たれて半野生化したネネはいずれも標高の高いところに生息します。理由は、その高さまではマングースが侵入しないからです。この努力が実ったわけですが、カウアイ島では個体数が増えすぎ、問題となりはじめています。環境保全の難しさを知らされます。

ネネは雁(ガン)の仲間ですが、岩稜地帯に生息するため、水掻きがかなり退化しています。また、渡り鳥としての性質も失っています。この他にも、産卵時期や産卵場所、交尾の場所など、他の一般的な雁とは異なる性質が数多く確認されています。もちろん共通の性質もあります。水鳥なので泳ぐことができますし、雁の特徴であるV字編隊での飛翔も行います。

しかし、良い状況かというとまだ油断はなりません。ネネはきわめて限られた集団から人工的に繁殖させたため、種の多様化に対応していないのです。ある1羽が致命的な病に罹ると、他のすべてが同じ病に罹る可能性が高いということです。もうひとつの問題は、完全な野生状態で個体群を維持できるほどの幼鳥が誕生していないという点です。野生に帰しても、子を産むことなく老衰して死ぬことを繰り返すなら、人間が繁殖させて放鳥するという行為をいつまでもつづけなければなりません。この問題を解決するためには、生息環境をしっかり整えてやることが大切ですが、マングースや野ブタ、野良猫、野犬などの駆除は簡単ではありませんし、ネネに適した森の復元も長い時間をかけて行わなければならず、息の長い作業が必要とされます

動物情報

学名  :Branta sandvicensis
     カモ科コクガン属
ハワイ名:Nēnē
英名  :Hawaiian Goose
和名  :ハワイガン、ネネ
原産地 :ハワイ固有種
特徴  :体長は55cmから75cm、体重は2キロ前後になる。ネネは一度に5~8個の卵を産み、30日ほどで孵化する。この間、オスが卵の世話をする。先祖は北米が原産と言われるカナダガン。ちなみに、ハワイ名は「ネーネー」という鳴き声に由来する。

ネネ(キラウエア)


チャッカー

ハワイには1923年に導入されました。ハワイの主要6島すべてに生息します。モロカイ島、ラーナイ島、マウイ島、ハワイ島に多く、カウアイ島とオアフ島ではあまり見られません。標高300~3,000mの、植物が少ない乾燥した岩場を好みます。マウイ島のハレアカラ国立公園(マウイ島)やハワイ島のサドル・ロードなどで、岩の間を走っていたり、岩の上に立って辺りを見渡している姿が見られます。英名は、鳴き声が「チャック・チャック・チャッカー」と聞こえることに由来します。

動物情報

学名  :Alectoris chukar
     キジ科イワシャコ属
ハワイ名:なし
英名  :Chukar Partridge
和名  :イワシャコ
原産地 :アジア~東欧の高地
特徴  :全長35cm。雌雄同色。上面は灰色がかった茶色で、下面は明るい色です。喉は白色で、脇に白黒の濃い縞模様があります。額から目、首を通り胸でつながる黒色の太い線があります。耳の部分は茶色です。嘴と足は赤色です。目の周りには赤いリングがあります。鳴き声は、大きな「チャック、チャック、チャック」。英語名のChukarは、この鳴き声に由来します。雌は「コワッ、コワッ、コワッ」と鳴き、雌鶏の鳴き声に似ています。

チャッカー(ハレアカラ)


エルッケルス・フランコリン

エルッケルス・フランコリンは狩猟鳥として1957年にハワイに導入されました。今日ではマウイ島を除く主要な島に生息します。とくにハワイ島のマウナ・ロア西陵や、カウアイ島のピヘア・トレイルでは大きな群れを作って生息しています。エルッケルス・フランコリンはモア(ニワトリ)と同じく飛ぶことはできますが、驚かない限り、1日の大半を脚で移動します。

動物情報

学名  :Pternistis erckelii
     キジ科クロガオシャコ属
ハワイ名:なし
英名  :Erckel's francolin
和名  :クロガオシャコ
原産地 :北アフリカ
特徴  :体長は40cmほど。羽毛は茶色に黒の斑が混じります。目の上に太い眉に似た黒い模様があります。

エルッケルス・フランコリン(マウナ・ロア)


カリヒフェザン

1962年に導入され、帰化。
森に住むカリヒフェザンはたいてい番(つがい)で行動します。警戒心は強いですが、車道やトレイルで餌を探す姿を良く見かけます。主食は種子や昆虫などです。夜は木の上で寝ます。カリヒとは、インド北部地方での、この鳥の呼び名です。Pheasantとは、英語でキジ科の鳥の総称ですが、キジと同じく、近くに幼鳥や卵を抱えたメスがいるときは、怪我をした真似をして人の前に現れ、巣から遠ざけようとします。

動物情報

学名  :Lophura leucomelanos
     キジ科ハッカン属
ハワイ名:なし
英名  :Kalij Pheasant
和名  :ミヤマハッカン
原産地 :インドシナ~ヒマラヤ
特徴  :体長は約70cmで、雄は全体に青黒っぽく、胸は明るい茶色をしている。メスは全身が白い縁取りのある茶色で尾羽は暗い茶色。目の周囲は雄と同じく赤い。頭頂部に冠毛がある。

カリヒフェザン(キプカ・プアウル)

 

 

※トップ画像は、カウアイ島キラウエア岬で遭遇した番(つがい)のネネです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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