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2015.12.28

山鳥1(ハワイミツスイ、他)

山鳥1(ハワイミツスイ、他)

 ハワイの森には人が住みはじめる前から生息していた山鳥がいます。代表的なのは、花の蜜を餌とするハワイミツスイです。カナリアの遠い親戚で、祖先は北米のハウスフィンチです。ハワイに定住したのは350万年ほど前とされるので、それより古い時代に誕生したカウアイ島やニイハウ島、あるいはレイサン島などの北西ハワイ諸島に住み着いたことになります。ハワイ諸島には猛禽類などの天敵がいなかったため、ハワイミツスイはそれぞれ特定の場所に落ち着き、そこに自生する植物を餌にして暮らしてきました。
 

 その結果、花の蜜を吸うものはクチバシが長くわん曲し、樹皮の昆虫をつまみ出して食べるものは下のクチバシが上よりも短くなりました。また、木の実をこじ開けて食べるものは下のくちばしが極端に短くなり、固い実を食べる種類は祖先のハウスフィンチと同じく、万力のように短くて太いくちばしを持つようになりました。このように、生物が異なった環境に適応し、比較的短い期間に形態や生理的に分化してさまざまな系統に分岐していく現象を適応放散と呼びます。
 

 ハワイミツスイは200年ほど前まで50種ほど生息していたとされますが、現在は13属23種と報告されています。しかし「生存している可能性がゼロではない」という程度の種が多く、実際には10種を切ると説く鳥類学者もいます。保護活動は間断なく続いていますが、ハワイミツスイをはじめとする在来の鳥の生息環境は日々悪化しています。

アパパネ(和名:アカハワイミツスイ、英名:なし、学名:Himatione sanguinea)

 ハワイミツスイの仲間のうち、もっともよく目にする鳥です。オアフ島では生息数が減少しています。体長は約13cm、主翼は黒、腹部は白、それ以外は赤い色をしています。クチバシは黄色または黒っぽい色をしています。主にオヒアに咲くレフアの花の蜜を吸います。(固有種)

アパパネ(ハワイ島)

イイヴィ(和名:ベニハワイミツスイ、英名:なし、学名:Vestiaria coccinea)

 体色はアパパネに似ていますが、一回り大きく、腹部が赤く、長くわん曲した赤いクチバシを持つ点が異なります。体長は約15cmです。オヒア・レフアやロベリア、オヘロ、マーマネなどの花の蜜を吸います。かつては諸島全域にいましたが、ラナイ島では絶滅、オアフ島やモロカイ島でもほとんど見られなくなりました。(固有種、準絶滅危惧種)

イイヴィ(ハワイ島)

アマキヒ(和名:ミドリハワイミツスイ、英名:なし、学名:Hemignathus stejnegeri)

 ハワイミツスイは島ごとに亜種がおり、わずかに外観やサイズが異なります。カウアイアマキヒを例に取ると、体長は約11cm、雄は他島のアマキヒよりも長いクチバシを持つのが特徴です。ハワイ島のハワイアマキヒは、カウアイアマキヒよりも明るい羽を持ち、クチバシのカーブはなだらかです。また、後者は花の蜜だけでなく、果実や小さな虫も餌とします。(固有種)
 

※ページ上のイメージ画像はハワイ島のアマキヒ親子です。

アマキヒ(カウアイ島)

エレパイオ(和名:ハワイヒタキ 、英名:なし、学名:Chasiempis sandwichensis)

 森にはヒタキの仲間であるエレパイオもいます。各島で異なる進化を遂げたため、島ごとに固有のエレパイオが生息します。エレパイオは好奇心旺盛な鳥で、人が集まるところに近づく傾向があります。体長は約14cmです。木のなかに棲む虫を獲って食べるため、昔の人はカヌーの材料となるコアの木を決めるとき、3日間目当ての木の下で観察をしてエレパイオが来なければ虫の食いのない木と判断して伐採しました。(固有種、絶滅危惧種)

エレパイオ(カウアイ島)

オーマオ(和名:ハワイツグミ 、英名:なし、学名:Myadestes obscurus)

 ツグミの仲間であるオーマオは極めて生息数が少なく、絶滅の瀬戸際にある在来種のひとつです。腹部は明るい茶色、全体が濃い茶色で、比較的地味な色合いです。体長は約18cm、辺りに鳴り響くすばらしい声を持つ点が大きな特徴で、さまざまな鳴き方ができます。用心深く、あまり人前に姿を現しません。果実や木の実、虫などを餌とします。(固有種、絶滅危惧種)

オーマオ(ハワイ島)

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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