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所用時間5min
2014.10.08

ジェームズ・ケケラ

キリスト教牧師になった初のネイティブ・ハワイアン

  • ジェームズはオアフ島ノースショア、モクレイアの首長一家の出身。
     
  • ネイティブ・ハワイアンとして初めてキリスト教牧師、宣教師になった。
     
  • マルケサス諸島でアメリカ人の命を助けた行動により、リンカーン大統領から表彰された
     
  • 49年間を過ごしたマルケサス諸島にも、故郷ハワイにも、今もジェームズの子孫がたくさん暮らしている。

ホノルルのカワイアハオ教会にある、ジェームズ・ケケラの記念碑


首長一族からハワイアン初の牧師に

ネイティブ・ハワイアンとしては初のキリスト教牧師となったジェームズ・ケケラは、1824年、オアフ島モクレイアの首長一族の息子として生まれました(当時の名はケケラオカラニでしたが、このコラムの中ではジェームズと記します)。


近郊の小さなミッションスクールに通っていたジェームズ。あまりに賢く、熱心な生徒だったため、ホノルルの商人ジェームズ・ハネウェルが学費を負担。ハワイ初のプロテスタントスクールとしてマウイ島に創立されていたラハイナルナスクールに進学し、後にクリスチャンとしての洗礼を受けました。

その際クリスチャンネームとして選んだのが、恩人であるホノルル商人、ジェームズの名称でした。ジェームズはそこに自身の名前であるケケラオカラニを短くした「ケケラ」を合わせ、ジェームズ・ケケラと名乗ることに。ケケラオカラニにはいかにも首長の名らしい響きがあったために、「至上の」を意味するオカラニを省いてケケラとした、と言われています。


ジェームズが、同じくモクレイア出身でクリスチャンだった妻を伴い、マルケサス諸島内のヒヴァオア島に赴任したのは、1853年、29歳の時のこと。当時まだ食人の風習が残る未開地だったマルケサスに、プロテスタントの教えを広めるため、二度とハワイに戻れないことも覚悟でマルケサスに赴いたのでした。


実はジェームズが生まれた際、出生を祝うチャント(詩)が詠まれています。チャントにはジェームズがオアフ島とモロカイ島の首長の血筋を引くことなどが詠われ、将来の予言めいた、以下のような一節も含まれていました。


「この子は慎み深い人生を送り、南の土地の海岸を静かに歩くことになるだろう」


まさにこの予言をなぞるような人生を、ジェームズは送ることになったわけです。

リンカーン大統領を感動させた気高い行動

ヒヴァオア島に赴任して10余年が過ぎた1864年のこと。ジェームズが、酋長の一人に殺されかけていたアメリカ人船員の命を救うという出来事がありました。ペルーからやって来たスペイン系白人の捕鯨船に、息子をさらわれ殺されたという酋長が、同じ白人ということで島に上陸したアメリカ人を捕獲。復習を果たそうとしていたところを、ジェームズが仲裁に入りました。


ジェームズは酋長に、恨みのあるのは全く別の白人グループであって、そのアメリカ人には何の罪もないことを説き、説得。さらに「自分の持ち物はボートでも何でも差し出す。アメリカ人を自由にしてやってほしい」と懇願しました。その結果、無事アメリカ人船員は釈放され、ジェームズの家で介護された後、沖合いで待機していたアメリカ船に戻ることができたのでした。

ジェームズはカワイアハオ教会に眠っている

なんでもジェームズの願いが聞き入れられた時、酋長は薪を用意し、アメリカ人船員を焼き殺す儀式の準備がすっかり整った段階だったそうです。牧師として広く尊敬されていたとはいえ、マルケサスでは自身も一介の外国人。怒りに燃えた酋長を敵に回すことでアメリカ人船員と同じ目に合う可能性すらあったジェームズです。その危険を冒してアメリカ人船員を救ったジェームズの勇気ある行動はアメリカ中に広まり、リンカーン大統領の耳にも入りました。


ジェームズの英雄的行為に感銘を受けたリンカーン大統領は、ジェームズに懐中時計を贈呈。時計には「ヒヴァオア島にて、アメリカ市民を死の危機から救った気高い行動のため、アメリカ大統領からケケラ牧師にこれを贈る」との文字が、1864年1月14日の日付けとともに刻まれていました。現在その時計はホノルルのミッションハウス史跡史料館が所蔵し、ジェームズのリンカーン大統領当ての礼状は、首都ワシントンDCの議会図書館に保存されています。


ジェームズはその後もマルケサスにとどまり、故郷ハワイに帰還したのは1899年。75歳の時でした。1904年、80歳で亡くなり、ホノルルのカワイアハオ教会墓地に埋葬されました。カワイアハオ教会にはまた、ジェームズを記念した古い石碑が設置されています。

  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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