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所用時間5min
2015.10.13

イリマ

王朝のシンボルとなった花


当初はハワイ州の花候補にもなったことがあるイリマは、1923年にオアフ島の花に制定されました。赤と黄色はハワイ王朝を象徴する色であるため、これらの色の羽根を持つオオやマオといったハワイミツスイたちが大量に捕獲されました。やがて鳥が絶滅すると、王室は羽根に代わる素材としてイリマの花を用いたレイを作りはじめたのです。イリマの花は、開花直後は明るい黄色ですが、時間が経つにつれて濃いオレンジ色に変わるため、尊ばれました。紙のように薄い花弁が羽毛に似ていたためだともされます。


当時のイリマのレイは1mもの長さがあり、位の高い首長はそれを幾重にもかけたと言われます。なかでもカメハメハ4世の王妃であるエマ女王は、ことのほかイリマのレイを好みました。それ以降、このレイは王室だけが使うことのできる特別なものとなりました

イリマの花

イリマのレイを編むには、日没後、あるいは日の出前に開花直前の蕾を摘みます。花の日持ちが悪いため、作業は手早く行わなければなりません。しかし、ひとつのレイを作るのに500個から1000個もの花が必要とされたので、作業は大変でした。


イリマの主根にノニなどを配合したものは皮膚炎用の飲み薬にしました。花と若葉と樹皮を他の植物と配合したものは喘息や疲労回復に用い、花の蕾から出る花汁は乳児の便秘やお産の痛みの際に服用しました。


半神マウイが巨大なうなぎを退治して母親であるヒナを助けたとき、彼女はその喜びを表すためにイリマでレイを作って自分の首に飾り、息子のマウイに感謝の意を表したという話があります。この逸話から、イリマのレイには「あなたを誇りに思う」という意味が込められるようになりました。また、フラの女神であるラカがイリマに姿を変えたという話もあります。

1000個前後の花を集めて作られたイリマ・レイ


特徴
低木で樹高は1~3メートル。花のサイズは2.5~3.5cmです。花弁は5枚。1本の花茎に2、3個の花をつけます。花弁は明るい黄色からオレンジ色へと変化する一日花。他に淡緑色や暗い赤色に変化するものもあります。ハワイでは1年を通じ、次々と花をつけます。分布域は広く、海岸から標高600mに渡ります。海辺の岩場や乾燥した大地で這うように伸びますが、樹高3m近くになる種類もあります。イリマパパと呼ばれる亜種は、地を這うように広がり、主に海岸に分布します。葉は花の2~10倍の大きさがあり、長楕円形のものや円形のもの、繊毛の多いものや少ないものなど、さまざまな形状があります。


ハワイ名:‘ilima, ‘ilima papa
学名:Sida fallax      アオイ科キンコジカ属(※Sida属はほとんどがイリマと呼ばれる)
英名:ilima, Yellow ilima
和名:なし
原産地:太平洋諸島に分布するハワイ固有種

イリマの群落

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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