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所用時間5min
2017.10.27

パパイヤ

パパイアは熱帯アメリカが原産ですが、野生種が見つかっていないため、場所を特定することはできません。今日、ハワイに広く流通するパパイアは、メキシコ南部からコスタリカにかけて分布する野生種に端を発します。19世紀初頭に、スペイン人のドン・マリンがマルケサス諸島から持ちこんだのが最初だとされます。その後パパイア農業はハワイに定着し、ソロという品種を中心に大きな産業となりました。パイナップルと並ぶ産業として定着したのです。

パパイアの株には雄、雌のほかに両性もあります。果実のサイズは品種によって大きく異なり、数百グラムから10kgに近いものまであります。パパイアは野生環境では9mほどにもなります。木ではなく草なので茎に見える部分はバナナと同じく、葉が幾重にも巻きついたものです。中心は空洞で木化した部分はあまりありません。農園では収獲の都合上、3mほどの高さに抑えています。

完熟まであと少しのパパイア

パパイアはパパイア科の植物で、学名を"Carica papaya"と言います。"carica"とはイチジクのこと。葉がとてもよく似ていることから誤って命名されました。"papaya"は西インド諸島の呼び名が由来と言われますが、正確なところは不明です。和名のチチウリ(乳瓜)は、パパイアに傷をつけると染み出す白い乳液が由来です。この液体は有毒で、目に入ったり爪の間に入ると激痛が生じます。しかしパパインというタンパク質分解酵素が含まれるので、これを抽出して製品にされることもあります。パパインは肉をやわらかくしたり、消化を助けます。

パパイアはとても成長が早く、半年から9ヶ月で実をつけます。パパイア栽培にはいくつか克服すべき課題があります。雌株と両性株に果実がつきますが、品質に大きな差はないものの、雌株は丸みを帯びた形に、両性株は洋ナシ型となり、外観が異なります。市場では洋ナシ型が好まれるため、大半の農園では両性株を育てます。しかし、パパイアは花をつけるまで性別がわからないため、ある程度生長してから間引くという手間が発生します。効率の悪い栽培を余儀なくされるのです。一部ではあらかじめ性別が判明しているバイオ苗が利用されることもあります。また、開花する前の苗の葉からDNAを採取し、性別を判定する技術もあります。性別の見きわめ以外にも風の問題があります。パパイアは草で、幹に見える部分は内部が空洞ですから風に弱いのです。そのため、強風避けに、防風林を用意する必要があります。

パパイアの花

もうひとつの課題はウイルスです。リングスポットと呼ばれるウィルスがアブラムシを介して発生し、果実に斑点ができます。ハワイでは1950年代に大発生し、遺伝子組み換え技術が導入されるきっかけとなりました。今日、ハワイで売られているパパイアの90%は遺伝子組み換えをされたものです。それで問題が解決するわけではないのが農業の難しいところです。リングスポット病の被害から免れたものの、今度はブラックスポットいう新種のウィルスが発生したのです。また、遺伝子組み換えによる新パパイアは、わずかながらアレルギーを起こしやすくする可能性があるとも言われています。

しかし、最大の問題は、ハワイのパパイアにとって最大の顧客である日本が、遺伝子組み換えパパイアの購入を拒否したことでした。なかでも寡占的にパパイアをつくってきたハワイ島は大打撃を蒙り、農園の廃業が続出した時期もありました。その後、パパイア農家の一部ではパパイアの間にマンゴーや柑橘類、ココヤシなどを植えるようになりました。これを雑墾と言い、被害が生じてもそれが全体に行き渡らないようにしたり、パパイア自体がこうした環境で強くなるのです。その結果、遺伝子組み換えのパパイアを用いずにウィルス被害を乗り切るようになりました。

食べ頃のパパイアの見分け方は、皮に青い部分が残っていないこと。お尻の部分が軟らかくなっていることです。半日ほど冷蔵してから食べるとおいしさが増しますが、冷やしすぎたり、長期の冷蔵は味が落ちる原因となります。レモンや塩などをかけると、パパイアのおいしさをさらに引き出せます。ハワイではタイやベトナム料理店で、青いパパイヤのサラダが食べられます。

野生化したパパイア。草丈は8mほどある。

植物情報

学名:Carica Papaya パパイア科パパイア属
ハワイ名:Hē‘ī, Papaia, Milikana
英名:Papaya, Melon tree, Common papaw
和名:チチウリ、モクカ、パパヤ
原産地:メキシコ、西インド諸島、ブラジルなどの熱帯アメリカ / 外来種
特徴:多年草。7~9m、花は雌花(5~10cm)と雄花(3cm前後)とがあり、イチジクに似た葉とウロコ状の幹(茎)を持つ。

 

 

※トップ画像はパパイアを切り分けたものです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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