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所用時間5min
2015.05.15

ハワイアンキルトの手法

ハワイの伝統アートハワイアンキルトの巧みな手法

ハワイの伝統芸術であるハワイアンキルトはすべて手作業で作られます。左右対称のシンメトリック(雪の結晶あるいは切り紙)のデザインが特徴的なハワイアンキルトは、まずアップリケとなるデザインの部分をカットします。


デザインは通常、ハワイの植物がモチーフとなっていますが、雪の結晶か切り紙のようにデザインの1/8が主なデザインで、生地も8枚重ねしてカットします。(デザインによっては1/4の大きさもあり、その場合は4枚重ねしてカットする)

デザインを置きトレースする

デザインは昔から存在する伝統的なデザインや各自の先生のデザインを使ったり、上級者になれば、自分のデザインしたものを使ったりします。大きなキルトを作るときは、まず始めに生地を縫い、1枚の大きな生地にしてから、カッティングをします。

 

ここでは小さなキルトを手本にし、ハワイアンキルトの手法を紹介します。大きなキルトを作る場合も手法は全く変わりません。

 

最初の8枚重ねのカッティングが最も重要なステップでもありますが、時間をかけ、よく切れる布専用のはさみを使い、8枚をゆっくりカットするのがポイントです。下地、アップリケ地ともコットン100%の生地を使いましょう。
そのカットした生地を下地の上に広げ、中心から均等にデザインを広げ、下地にまち針で仮止めします。そのあとはしつけ糸で、アップリケ地をきちんと下地にしつけします。

下地の上にデザインを広げる

アップリケという手法を始めます。しつけしたアップリケ地の外側を約5mmほどの縫い代で、針を使い折り込みながら、おくたてまつりという縫い方で下地に縫い付けていきます。縫い幅は約3-4mmで目を揃えるように縫っていきましょう。これをアップリケと呼び、パッチワークキルトのピーシングとは全く別の手法になります。デザインの窪んでいるV字の谷の部分と、とんがりのある山の部分は、きちんと布を折り込み、注意しながら進んで行きましょう。デザインによってはプカ(穴)があいているものもあります。生地の折り込みがきちんとできるよう、何枚も作り練習しましょう。

アップリケの手法

全体のアップリケが終わったら、しつけを取り除き、キルト芯(綿)と裏地の3枚を重ね、動かないようにまち針で固定し、しつけをします。フープとシンブル(指ぬき)を用意します。3枚の生地が動かないようにフープをしっかりはめ、キルティングを始めます。アップリケをしたすぐ外側をデザインに沿ってキルティングを始めます。これをおとしキルトと呼び、デザインを浮かび上がらせるステッチです。

 

キルティングの時はフープとシンブルを使います

デザイン全体におとしキルトが終わったら、デザインのキルティングします。これをデザインキルトと言います。 最後に水の波紋のような輪取りを幾重にもキルティングしますが、 昔はデザインキルトにも エコーキルトを施していたようです。今では葉の葉脈や、花の花びらのデザインなど、本物の植物と同じようなデザインキルトが多く見られます。

 

シンブルを使うとキルティングの針目が安定します

デザインキルトが終わったら、デザインの周りを同じ幅で幾重にもキルトする、エコーキルトをします。ハワイは海で囲まれているので、波紋のようなエコーキルトが施されるようになったと言われています。

 

このタペストリーを作るだけでも(約28cm角)、初心者は1週間以上かかります。また、2m角のベッドカバーの制作には2万針以上のステッチが必要になります。従って制作には1年もの長い期間がかかります。

エコーキルトは波紋のようです

ハワイアンキルトの手法は、すべて文献に残っているわけではありませんが、アンティと呼ばれる先生達から教えてもらえる手法はみなさんほぼ同じです。そのアンティ達もそのおばあちゃんや先生達から、キルトを作りながら教えてもらいました。

 

文献には残されていませんが、言い伝えの手法をまた、言い伝えで今の時代に伝えています。

 

すべて手作業と、身につけた感覚で作業するハワイアンキルトは、ただの手芸ではなく、高いクォリティーのアート(芸術)として認知され、世界に知られています。

 

おばあちゃんが作ったキルトがあるから、あまり作らないという若者の意見が多く聞かれますが、ハワイの芸術を守り、永続し、次の世の中に素晴らしいハワイアンキルトの良さを伝えるというミッションが今の現代人には必要です。キルターを始め、ハワイアンの文化に携わる人々が、そのミッションを果たす義務があるはずです。

 

ハワイアンキルトを見かけたら、その巧みな手作業の技を再確認してみましょう。

 

ウル(パンノキ)の完成キルト

参考資料
「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」
伝統と歴史がはぐくんだハワイの手仕事

著者: 藤原小百合アン
発行: 誠文堂新光社

  • 藤原 小百合 アン
    Anne Sayuri Fujiwara
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。メリーランド大学学士号取得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。ハワイ、日本でのレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。15年以上、パシフィックリゾートの「キルトパラダイス」(http://www.holoholo.world/kawaraban/category/quilt/)を連載中。 日本でハワイアンキルト本を数冊出版。2006年よりホノルルフェスティバルにおける伝統的ハワイアンキルト展を毎年開催。2013年よりイオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを始め、現在ハワイ在住31年目。

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