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所用時間5min
2015.05.18

気候と気象

多様な気候と植生 -熱帯雨林から高山砂漠帯まで


ハワイの気候


ハワイ諸島は熱帯に属します。熱帯地域とは、南北の回帰線にはさまれた地域を指します。回帰線は固定された緯度ではなく、地球の傾きのせいで毎年変動しますが、赤道をはさみ、おおよそ北緯23度から南緯23度の間を指します。熱帯の気候定義は、年の平均気温が摂氏20度以上で、もっとも寒い月の平均気温が18度を下回らない地域を指します。ハワイ諸島はこれらの定義に当てはまるため、熱帯の島とされます。ハワイは同時に、亜熱帯地域とも呼ばれます。亜熱帯は、温帯と熱帯の中間的様相を示す便宜的な概念ですが、近年は用いられなくなっています。


島々の降雨量や晴天率は、北東から吹きつける貿易風の影響により、地域によって大きく異なります。


ハワイにはさまざまな気候が共存します。天候区分というのはケッペンという学者が行ったものがよく知られており、それによれば世界にある17の気候区分のうち15があるとされます。


ハワイ島の高山では冬に冠雪があります。このうち、マウナ・ケアには氷河の跡が残ります。長期に渡る冠雪で圧力を受けた溶岩は硬い石に変化し、武器や用具として伝統ハワイ社会で用いられました。このような気温差は4000メートルを超える山頂と海岸の間だけでなく、例えばラナイ島のラナイシティーと海岸の間でも顕著に見られます。町の標高は490メートルほどしかありませんが、海岸で泳ぎを楽しめるような天気であっても、町では暖炉に火が欲しくなるほど、朝夕に冷えこみます。ハワイ諸島は風や日照率などの関係で、わずかな距離や高低差で大きく気候が異なります。

ハワイ島の気候区分(NOAAデータによる作図)

気象と特徴

 
ハワイ諸島は北西から南東にかけて直線状に連なります。諸島には4月から10月頃まで、北東より南西に吹き抜ける貿易風が吹きつけます。この貿易風により、島はその地理的地形的条件によって大きく気候が異なり、降雨量や晴天率も変化します。


カウアイ島、オアフ島、マウイ島、ハワイ島には島の中央付近に脊梁山脈があり、その北東部と南西部で大きく気象条件が異なります。早春から晩秋にかけて吹き抜ける貿易風が北東から吹きつけるため、島の北東部は雨が多く、その結果、森林が出現し、浸食も深く刻まれます。反対側の南東部は乾いた風が吹き、緑は少なめです。ただし、低山の場合は、山頂を巻き込むように南西部に少し張り出す形で雨雲を形成するため、南西であっても山麓には雨が降りやすくなります。例えばオアフ島のコオラウ山脈はカネオヘ側に多くの雨を降らせますが、山脈を越えてマノアやマキキ地区にも雨を降らせます。しかし、ワイキキ地区にはほとんど雨を落としません。


この特徴を活かし、ハワイ諸島の主要リゾート地は各島の南西部につくられることが多いです。カウアイ島ではワイルアやカパア、ポイプーなど、オアフ島ではワイキキ、コオリナなど、マウイ島ではラハイナやカアナ・パリ、キヘイなど、ハワイ島ではカイルア・コナやワイコロアなどです。北東部にもリゾート地はありますが、収容人数の点では小規模です。


雨が多い地域であっても日本のように終日降りつづけることは少なく、たいていは一過性で、数十分も待てば上がることが少なくありません。ハワイ島ヒロは毎日雨が降ることで知られていますが、ほとんどの場合は、早朝に降り、午前8時頃には日が射していることが多いです。降雨がごく短時間であったり、雨の降る時間帯に目安がつくため、ハワイの住人は傘を持参することがほとんどありません。


もちろん、気象条件は明確に線引きされるわけではありません。たとえばオアフ島のワヒアヴァやハワイ島のキラウエアでは天候の変化が目立ちます。これらの地域では風が複雑な動きをするためです。しかし、そのおかげで虹がよく出現します。


オアフ島のヌアヌパリやハワイ島のワイメアなどでは1年を通じて強風が吹きます。山脈の一部が切れ落ちていて、貿易風の抜け道となるためです。


冬季は貿易風の勢いが弱まり、コナ・ウインドと呼ばれる迷走した流れが出現します。乾燥地域でも雨が多くなり、湿度も上昇します。1年を通じて暖かなイメージのあるハワイ諸島ですが、早朝はワイキキでも肌寒くなります。ホノルルのマノア地区やラナイ島のラナイシティー、ハワイ島のフアラライ山麓では暖房がほしくなります。4000メートルを超えるマウナ・ケアやマウナ・ロアでは冬季に冠雪があります。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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