講座詳細

受講履歴を確認する
所用時間5min
2017.11.24

マイア

ハワイに自生する食用バナナは東南アジアのマレー半島が原産です。その後、インドの野生種との間で交雑種ができ、このバナナは、タヒチやマルケサス諸島からハワイに移り住んだポリネシア人によって持ちこまれたもので、ハワイでは伝統植物と位置づけられます。今日では山や渓谷などで50種近くが野生化しています。栽培用のバナナは、数個の房がつくと花の部分を切り落とします。そのままにしておくと房が増え続け、ひとつひとつが大きく成長しないためです。先端の苞内の白い部分は食用となります。伝統文化では利用しませんでしたが、今日のハワイでは販売されています。

完熟したバナナの実は喘息の緩和に、茹でたバナナの実を他の植物と調合して便秘薬に、またビタミン類の豊富な果汁は赤ん坊の滋養強壮や胃腸病の緩和に用いました。葉は、屋根を葺いたり、傘にしたり、遊具などにしたほか、新鮮な葉は、レイの鮮度を保つための包装に用いました。葉はこのほかにも、地面を掘って食材を埋め、オーブンのように調理する(※イムと呼ばれる)伝統調理で、食材を覆うのに用いられました。葉の鞘はストローとなり、鞘は編んでサンダルを作る、というように、さまざまな用途に利用されました。

バナナの花。基部に実が育ちはじめている

その他にも、カパの染色や発酵酒の素材となったり、衣類や袋、網、家畜飼料にするなど、バナナはきわめて多くの用途に使われました。しかし、女性はバナナのうちいくつかの種類を食べることは許されませんでした。バナナはハワイの人々にとり、キノ・ラウ(化身)でもありました。キノ・ラウとは火の女神ペレのように、超自然的な肉体を持つ者がさまざまなものに姿を変えた姿を指します。マイアは、ハワイの4大神の一人であるカナロアのキノ・ラウでした。

ハワイの伝統文化では、黄色に熟した「マイア・イホ・レナ」と「マイア・ポポ・ウラ」は女性は食べることができませんでした。ハワイにはかつて50 種以上のバナナがあり、女性はそのうちの2 種類しか食べられなかった、という説もあります。禁止とされるバナナを食べたことが知れると死罪となったのです。このカプ(規則)は、カメハメハ2世が戒律を廃止するまで続きました。

バナナは旅人が飢えをしのぐことができるように原野に植えられたり、友人の畑に植えることもありましたが、一般にはタロ水田(ロイ)の周囲に植えられました。植え付けはしきたりにのっとって行われることが多く、満月の夜や正午に植えられたりしました。掘る穴の深さは肘までの長さ(ハイリマ)と決められていました。

バナナの実

伝承

火の女神ペレの兄弟がタヒチからハワイにバナナを持ちこんだという伝承があります。ハワイでは、バナナの夢を見たり、バナナを運ぶ者と出会うこと、あるいは船旅のときにバナナを持って行くのは不運をもたらすと言われました。笑って話すのは、熟れたバナナのようだとか、美しい人は若いバナナの葉のようだという喩えもあります。

ハワイの格言に、「人はすぐに葉を落とすバナナの茎(幹に見える軸の部分)のようだ」とか、「人間は欲しいときに果実をつけるバナナのようだ」という表現があります。また、若いバナナを手で振ると戦争開始の合図となりました。

遠い昔、バナナは茎の高いところに実をつけました。あるとき低地のバナナと高地のバナナが喧嘩をし、低地のバナナが負けてしまいました。そのため、高地のバナナはいまも茎をまっすぐ伸ばし、その頂に実をつけますが、低地のバナナはうな垂れたような形で実をつけるようになったという話もあります。

バナナの株

植物情報

ハワイ名:Mai'a
学名:M. acuminata x balbisiana / M.paradisiaca
   バショウ科バショウ属
英名:Banana, Edible Banana
和名:バナナ
原産地:インド, マレー半島 / 伝統植物
特徴:多年草。草丈3.5~7.5m。花のサイズは60~90cm。大きな赤紫色の苞が1 枚開いたとき、その基部に黄色の花が2 列に並んでつく。バナナの花には受粉のプロセスがないため、地下茎から出る芽を摘んで植える。全房は5段から20段あり、1 段あたり2 本から20 本の果実をつける。幹のようにみえる部分は偽茎で、葉が重なり合って鞘になったもの。太さは20cmほどになる。葉は螺旋状に付き、最大で2m近くになる。栽培には高温多雨(年間2000~2500mm)の環境を必要とする。バナナは周年で実をつける。バナナは数個の房がつくと花の部分を切り落とす。そのままにしておくと房は増え続け、ひとつひとつが大きく成長しないためだ。病気や害虫には強い。ハワイでは食用バナナのほかに、観賞用バナナ(Musa ornataなど)も多い。
このほかに中国からインドネシアが原産で、赤い苞と花茎、赤い果実が特徴のムサ・コッキネア(Musa coccinea)がある。このバナナは、切り花や観賞用に用いられる。また、 マイア・ヘイ あるいはマイア・ポラポラ(Musa troglodytarum)と呼ばれる、マレー半島原産のバナナもある。葉のサイズは2~4mと巨大で、紫色の樹液は染料として用いられた。タヒチのボラボラ島でフェイ・バナナと呼ばれたのが起源だ。

 

※トップ画像はバナナの花の部分です。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

関連講座
メンバー登録してアロハプログラムを楽しもう!

ハワイについて学ぶならまずはメンバー登録がおすすめ!