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所用時間5min
2015.12.24

ハワイ・コールズ (1930s)

世界的に有名なラジオ番組がハワイ音楽普及に果たした役割について

  • ラジオ全盛時代、ハワイ音楽が国際的な人気を得た理由のひとつに『Hawaii Calls』という番組の存在があった。

ー 波の音とともに張りのある男性DJの声がスピーカーから聞こえてくる。

「フラを踊るのを見せておくれよ、ホノルルでみんなが踊ってるあの踊り」

ワイキキのボーイズ&ガールズが最近口ずさんでいる流行の歌の歌詞の一部です、と言って、DJが次のスターを紹介する。

「プア・アルメイダが歌う"フラを踊るのを見せておくれよ"にこたえて、ハワイアン・ガールズが"フラを教えてあげる"と歌います!」

DJの曲紹介のあとウクレレの軽快なイントロが始まった ー

 モアナ・ホテル(現モアナ・サーフライダー・ホテル)の中庭にあるテラスから放送されていたそのラジオ番組のタイトルは『ハワイ・コールズ』。アメリカの歴史に残るラジオ番組です。1935年から1975年まで40年間、ピーク時には世界各国400局ものステーションで放送されていたという大人気番組。そのハワイ・コールズの実際の放送を録音編集したCD『Memories of Hawaii Calls』があります。1940年代から50年代に録音されたと思われるその放送を目を閉じて聴いていると、当時のあのテラスにタイムスリップしたような気分を味わえます。当時世界中の人が、この番組を通じて、ハワイとハワイの音楽に出会い恋に落ちました。ちょっとレトロな、スチール・ギターを中心にしたバンド・サウンドと、歌い上げるようなボーカルが今聴くと新鮮に感じるかもしれません。『ラブリー・フラ・ハンズ』も『ハワイアン・ウェディング・ソング』も『リトル・ブラウン・ギャル』も、歌い継がれるハパ・ハオレ・ソングのほとんどはこの番組のおかげで大ヒットし有名になりました。

ー「This is Hawaii Calls from the beach at Waikiki in Hawaii!」

 番組の間に挟まれる決まり文句をDJが言う。

「ハワイ・コールズ、この番組はハワイのワイキキ・ビーチからお届けしています」ー

 

 波の音をバックに話すのは番組の進行役、ウェブリー・エドワーズさん。1935年の第1回放送から、1972年に発作で倒れ番組を降板するまで37年間ハワイ・コールズの声であり続けた人です。

 オレゴン生まれのウェブリーがハワイへ引っ越したのは1928年、彼が26歳のとき。ハワイの魅力に惹きつけられた彼は、島の人々が演奏するハワイアン・ミュージックにも心を奪われました。1934年にサンフランシスコへ仕事で行った際に、そこで演奏されていたハワイアンを聴いて彼はショックを受けます。それが本場のハワイアンとは似て非なるものだったからでした。衝撃を受けた彼はひとつの夢のようなアイデアを思いつきました。

 

「ハワイから本場のハワイアン・ミュージックを、アメリカ本土へ届けよう!」

 オレゴンのラジオ放送の専門学校に行っていたことがある彼は、カリフォルニアのラジオ業界をあたり、友人がいるCBSから2週間の試験放送のチャンスをつかみます。ハワイに帰ったウェブリーは準備を進めます。モアナ・ホテルのバニアンツリーがある中庭を望むテラスをステージにすることが決まります。そして、1935年7月3日、観客を前に放送するハワイ・コールズの記念すべき第1回放送が行われました。

 毎週土曜日の30分番組『ハワイ・コールズ』はその後人気を集め、アメリカ全土、オーストラリア、南アメリカなど各地のラジオで放送されるようになっていきました。日本を含むアジアでは、駐留米軍放送(AFRSあるいは改組後のFEN)を通じて番組が放送されました。ハワイから遠く離れた場所で、青い海と風に揺れるパームツリーを思い描きながら聴くハワイ・コールズに人々は酔いしれました。ハワイアン・ミュージックがその時代の音楽界のメインストリームになり、それはしばらく続きました。

 

 波の音をバックに入れたいときには、ステージからちょっと離れた海沿いまでマイクを持っていって話したり、涼しげな声を演出するために、放送前には必ず冷たいアイスクリームをほおばった、というエピソードも残しているウェブリー。1972年に発作で倒れ70歳で番組を降板、番組は進行役を変えてその後も継続しましたが、75年に40年の歴史を閉じて終了。ウェブリーはその2年後に亡くなりました。生涯をハワイ・コールズという、ハワイアン・ミュージックを世界に広める番組に捧げた彼の遺灰は、モアナ・サーフライダーの沖の海に散骨されたそうです。

 ちなみに、ハワイ・コールズは60年代にテレビ放送もしていました。アロハを着てマイクに向かって笑顔で話すウェブリーさんの映像はこちら

  • よしみ Nui だいすけ
    Daisuke Yoshimi
    担当講師

    【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
    facebook: https://www.facebook.com/NuiDaisuke
    公式HP: http://www.yoshimidaisuke.com/

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