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2017.12.08

リリコイ

リリコイの英名はパッションフラワーですが、現地でも日本でも、その果実を指してパッションフルーツと呼ばれます。リリコイについても、植物名というより、果実を指して用いられることがほとんどです。リリコイはトケイソウ科に属しますが、この仲間は、中南米やアフリカを中心とする熱帯地方に約10属500種が分布します。そのほとんどがツル性で、約50種が食用となります。

花は白色ですが、中心に濃い紫色の副冠があり、特徴的な花柱を伸ばします。10枚に見える花弁は5枚の花弁と5枚の萼片が重なり合ったものです。ハワイでは周年で咲くつる植物で、6mほどの高さまで樹木を登り、その木に寄生します。

科名の「Passion」とは「情熱」のことではなく「(キリストの)受難」を意味します。3裂した雄しべを三位一体に、副冠をイバラの冠に見立てたものです。あるいは、花柱を十字架、3つに分裂した雌しべは釘、副冠は茨の冠、5枚の花弁と5枚の萼片は10人の使徒、巻きひげはムチで葉は槍だという説もあります。これに対し、和名は花柱を時計に見立てたことに由来します。

垣根となったリリコイ

リリコイはブラジル原産の植物で、1920年代にハワイ諸島に持ち込まれました。紫色の野生種もハワイ諸島に広く分布しますが、ハワイのリリコイの多くは、1923年にオーストラリアから導入されたクダモノトケイソウで、完熟すると表皮が黄色になります。これとは別に、デレマーという人物が1880年頃、オーストラリアから導入し、マウイ島東部のリリコイ地域に植えたものが野生化したという説もあります。それがリリコイの名の由来だとされます。このリリコイは褐色種(紫種)とされます。リリコイの果実の黄色種は低地から標高600mほど、褐色の野生種は600mから1200mに分布します。他に赤色種やオレンジ色種、紫色種などがあります。

ハワイ各島では垣根代わりにリリコイを植える家庭もあります。ただし気温には注意が必要で、摂氏30度を超える日が続くと障害を起こして花芽や生長途中の果実を落とすことがあります。果実を確実につけさせるためには、最初に咲いた花に人工授粉させる必要があります。(ハチなどがよく飛来する場所ではその必要はありません。)受粉から2週間ほどでつるの生長は止まり、その後1ヶ月半ほどで完熟し、果実は自然に落下します。

野生のリリコイの実(紫種)

リリコイの起源がいずれであるのかは定かではありませんが、植物学的には、P.edulis と P.incarnata の交雑種とされます。今日、ハワイのパッションフラワーの果肉(パッションフルーツ)から造られるジュースやジェリー、ジャム、ソースなどは、ほぼこの交雑種から造られます。十分に甘くするには追熟し、表皮にシワが寄るのを待ちます。完熟した果肉はとても甘く、種ごと生食できます。果肉のみを食べたいときは、低速のミキサーで分離できます。果実は最初、白い斑点が入った暗緑色ですが、完熟すると黄色になります。表皮に多少の凹凸が現れると食べ頃です。ハワイではリリコイを使ったジュースやケーキ、パンケーキはとくに高い人気があります。

ハワイではあまり見られませんが、リリコイの花をお茶にして飲むと、頭痛や胃痛、慢性疲労感、緊張や不安を和らげる効果があるとされます。また、筋肉の痙攣を緩和し痛みを鎮める働きもあります。欧州では今日でも漢方のような医薬品として用いられます。

森で収獲したリリコイ

植物情報

学名: Passiflora edulis, P.incarnata
   トケイソウ科トケイソウ属(パッシフローラ属)
ハワイ名:Liliko'i
英名:Passion Fruit, Granadilla, Purple granadilla
和名:クダモノトケイソウ、パッションフラワー
原産地:ブラジル / 外来種
特徴:つる性の多年草で、花のサイズは6~10cm。茎は木質化する。 花冠は6~10cm、果実は長径6~8cm、葉は3裂し、大きさは6~16cm。内部に黒い種子とゼリー状の果肉がある。果実の表皮は白い斑点混じりの緑色だが、完熟すると黄色になる。ほかに紫色の野生種を含む多くの近縁種がある。

 

 

※トップ画像はリリコイの花(パッションフラワー)です。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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