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2016.07.20

ハワイ諸島の水系

ハワイ諸島の水系

 ハワイ諸島はいずれも地底のマグマが上昇し、海底から堆積した玄武岩質溶岩でできています。この溶岩は冷めるときに噴出する水蒸気のせいで多くの穴が空きます(多孔質)。そのため、ハワイ島のような新しい島では、雨は溶岩を貫通して地下に溜まることが多く、大きな川ができません。雨季に大きな流れを作ることはあっても乾季には干上がったり、大きく水量が減る川がほとんどです。一方、カウアイのように長い地質年代の島は、溶岩は細かく砕かれて水はけが悪くなったり、腐食した植物の堆積が土壌となるなどして、比較的緻密な大地を形成します。このような土地には、中型の船が航行できるくらいの水量を、1年を通じて保ちます。

カウアイ島のワイルア川。1年を通じて豊富な水量があり、中型の船舶が往来できる

 ハワイ諸島は夏に乾季を迎えるので、川や滝の流量は夏に減少したり消えたりすることが多いですが、地形の影響により、冬や春に最低となる地域もあります。各島の最長の川は次の通りです。

オアフ島  カウコナフア川  33.0(単位:マイル)
ハワイ島  ワイルク川    32.0
カウアイ島 ワイメア川    19.5
マウイ島  カリアリヌイ渓谷 18.0
ラナイ島  マウナレイ渓谷  12.9
モロカイ島 ワイラウ川     6.5
ニイハウ島 ケアナウリイ渓谷  5.9
カホオラヴェ島 アフプー渓谷  4.0
※夏季に大幅に流量を減らしたり、干上がる川を含みます。

 カウアイ島と同じように古い膣年代のニイハウ島は川が消滅し、かつてあった大きな湖が干上がってしまいました。北東から押し寄せる貿易風は、隣接するカウアイ島の山々に雨を落とすため、ニイハウ島の大半は乾燥した風しか到来しないからです。カウアイ島やオアフ島、マウイ島、ハワイ島のように、中央に高山のある島々では北東部に雨が多く、南西部に少なくなります。従って、川の源流部は島の中央から北東にのみ存在します。

ハワイ島のアカカ滝。マウナ・ケアの北東山麓に落ちる雨を集めて膨大な水を落とす

 各島の水系を北のカウアイ島から確認します。カウアイ島は島のほぼ中央にカヴァイキニとワイアレアレという2つの高峰と高原があり、多量の雨を振らせる結果、アラカイ湿原が誕生し、東側の崖には無数の滝が架かります。ここから流れる水系のうち、東海岸に注ぐワイルア川は、ハワイ諸島で唯一、通年で中型船が往来できます。北東部のアナホラ地区はときおり大量の水が鉄砲水として海岸部に押し出されるため、家が流されるなどの被害が出ることもあります。北海岸にはワイニハ川をはじめとするいくつもの川があり、北壁にはいくつもの滝が架かります。南部はワイメア渓谷とその支流があります。

 オアフ島は北部を東西に走るコオラウ山脈に落ちる雨が、南部と北部に水を流します。たとえばコオラウ山脈の南麓に位置するマキキ地区やマノア地区には多量の雨が降り、これらの水は地下川となってワイキキに至ります。そのため、ワイキキはかつて広大な湿地が広がっていました。北部は大雨のときに多量の雨が床上浸水を招いたり、鉄砲水となって家を押し流すなどのことがありました。そのため、北麓のホオマルヒアに大規模な貯水池が作られました。(※一般にはホオマルヒア植物園として知られています。)島の南部を東西に連なるワイアナエ山脈は、北東側に位置するコオラウ山脈のせいで湿った風は少なく、北東側も降雨は少なく、南西側は乾燥しています。

カウアイ島のカパア地区にある貯水池。あふれた水は道を越えて流れ下る

 ハワイ島は島の東端に位置するヒロの北西部に多くの雨が降るほか、北西端のコハラ半島北部に雨を落とします。この雨を活用するため、日系人の力によって用水路が作られ、コハラ山脈の南西部に広がる牧場や農場に利用されています。マウナロアの南に位置するカウ地区は、その大部分が荒涼としていますが、南西から北東にかけて雨の降るベルト地帯があり、同じような環境にある島西部のコナ地区とともに、コーヒー産業が盛んです。しかし島の半分を占める西部は乾燥しており、植生は乏しいです。

貯水池について

 上に書いたように、夏季に流量が減るか干上がったりする地域が多いため、各島には貯水池が点在します。ハワイ諸島は全域で生活用水を確保できる島はなく、もっとも雨が多いカウアイ島でも各地に貯水池が作られています。


※トップの画像は、オアフ島のヌアヌ・パリ(コオラウ山脈)から見下ろしたカネオヘ周辺の景観です。分厚い雨雲は、北東から吹き寄せる貿易風です。

ハワイ諸島の河川と湖沼

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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