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所用時間5min
2016.09.07

ハワイ音楽の歴史〜1980s ブラザーズ・カジメロ

ハワイ音楽の流れを変えたサンデーマノアの登場で幕を開け、スラックキー・レジェンド、ギャビー・パヒヌイの死で幕を閉じた70年代は、「ハワイアンの誇り」の時代でした。ハワイ文化復興のムーブメントは、音楽を媒体にして広がり盛り上がりました。ハワイアン・ミュージックが社会性を持った激動の時代でした。その後に続いた80年代の音楽シーンはどんなものだったのでしょう。

80年代のハワイ音楽

70年代に登場した多くの才能あるアーティストたちによって、ハワイの音楽シーンは激しく活気にあふれたものになりました。カラパナやC&K、オロマナの活躍で、ハワイアン・ミュージックにアメリカ本土のウェストコースト・ロック/フォークの要素が加わりました。ギャビー・パヒヌイの人気でスラックキー・ギターが再発見されました。トラディショナルなハワイアンソングが新たなアレンジで生まれ変わりました。ハワイ語の歌を歌うことの意味に目覚めたアーティストや、英語でハワイアンの誇りを主張するアーティストが音楽でローカルの心を掴みました。ハワイ音楽が社会的メッセージ性のある音楽になった時代でした。この時代に登場したアーティストたちが引き続き活躍するための舞台、80年代とはそういう時代でした。裏を返すなら、80年代に入って新たな才能出現の勢いが衰えた、とも言えます。

80年代のハワイの音楽シーンに新たに加わった特筆すべきもの、少なくともひとつ挙げられるのがハワイ版グラミー賞「ナ・ホク・ハノハノ」です。ハワイで活躍するアーティストにスポットライトを当て評価する、そんな舞台を作ろう、と音楽シーン全体の活性化を願って1978年にスタートした音楽祭です。年を重ねるごとに音楽祭の認知は広まり、ナ・ホク・ハノハノで受賞することがアーティストにとってのステップアップとステイタスを意味するようになっていきました。
ナ・ホク・ハノハノの受賞作品リストを見れば、その年、その時代の音楽シーンがわかる、そんな音楽祭として現在まで成長し続けています。
ナ・ホク・ハノハノ80年代の受賞作を見渡すと、二組のアーティストの受賞数が際立って多いことがわかります。その二組とは、ピーター・ムーン・バンドとブラザーズ・カジメロ。70年代をリードしたバンド「サンデー・マノア」の3人から派生した2つのバンドです。

ブラザーズ・カジメロ

80年代に質の高い音楽でハワイの音楽シーンをリードし、その後も第一線で活躍し続けた最も影響力を持ったアーティストを一組選ぶなら、こちら!
サンデーマノアでの成功の後、ロバート&ローランドの兄弟デュオとしてデビュー。創作量、人気ともに80年代をピークにして、現在まで30作以上の作品を世に送り出しました。トラディショナルなハワイアン・ミュージック・スタイルを維持しつつ、凝ったアレンジでオリジナリティーを発揮、唯一無二のハワイアン・ミュージック・スターとして君臨しました。トレードマークの白いウッドベース、そして時にはピアノを弾きながら歌うロバートの歌声は、一度聴いたら忘れられないテノール歌手のようなつややかさ。そしてローランドは「ギター一本のオーケストラ」と言わしめるテクニック。たった二人の最強のハワイアンバンドとして、永遠にハワイ音楽の歴史に残ることでしょう。
ちなみにロバート・カジメロはクムフラでもあります。男性フラダンサーのチームを率いて10年に一度メリーモナークに出場、優勝しています。フラとハワイ文化に対するロバートの愛と知識が、ブラザーズ・カジメロの音楽スタイルを支えた大切な要素の一つだったことに疑いの余地はないでしょう。

80年代のこの一枚!

The Best of the Brothers Cazimero, Vol.1 (1987)
1988年ナ・ホク・ハノハノ、アンソロジー・アルバム賞

The 50 Greatest Hawai'i Albums 23位
初期10年の曲を集めた初のベスト盤。古いハワイアン・ソングも彼らの斬新なアレンジが映える。「カ・ワイレレ・オ・ヌウアヌ」「ナニ・ハナレイ」「ザ・ビューティー・オブ・マウナケア」「エ・クウレイ」「カエナ」など名演ばかり。「レインボー・コネクション」のハワイ語バージョンがすばらしい。

同時代に活躍したアーティスト

  • ピーター・ムーン・バンド
  • オロマナ
  • リム・ファミリー
  • セシリオ&カポノ
  • マカハ・サンズ・オブ・ニイハウ
  • トニー・コンジュゲーション
  • カワイカプオカラニ・フランク・ヒューエット
  • よしみ Nui だいすけ
    Daisuke Yoshimi
    担当講師

    【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
    facebook: https://www.facebook.com/NuiDaisuke
    公式HP: http://www.yoshimidaisuke.com/

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