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所用時間5min
2017.11.02

コー

サトウキビはハワイ名はコーと言い、イネやタケと同じイネ科の植物です。長い花穂をつけた様子は同じイネ科のススキに良く似ています。ハワイに導入されたサトウキビの種類は多く、マウイ島のカハヌ・ガーデンには100種類以上のサトウキビが展示されています。  

サトウキビはポリネシア地域に古くから根づく農作物で、ハワイに移住したポリネシア人が持ち込んだ伝統植物です。サトウキビは砂糖(カンショ)の原料として世界の熱帯や亜熱帯地域で広く栽培されます。サトウキビの茎はタケと同じように木化し、節(ふし)を持ちます。ただし、タケと異なり、内部は柔らかな繊維質(髄)に満たされています。成長したサトウキビの繊維質には多量の糖分が含まれます。

サトウキビ産業と移民文化

サトウキビを収穫する日本女性

ハワイ諸島に欧米人が来島するまで、サトウキビはいくつもある農作物のひとつにすぎませんでした。先住の人々は、繊維の多いサトウキビを噛んで歯の掃除をしたほか、関節炎や風邪、咳などの治療薬として用いました。

サトウキビが砂糖産業として定着すると、瞬く間に諸島各地にサトウキビ畑が広がりました。1835年、アメリカ人のウィリアム・フーパーは、ラッド貿易商社をホノルルに設立しました。同社はカメハメハ3世からカウアイ島のコーロア周辺の土地を借り受け、ハワイ人労働者を雇い入れてサトウキビ農園を開墾しました。コーロアには「サトウキビの生い茂る豊かな土地」という意味があります。この地は、ポリネシア人が持ちこんだサトウキビが野生化して広がる土地でした。

その後、1848年にグレート・マヘレと呼ばれる土地の割譲法案が成立します。この法律の背景には、農地を持つ外国人による土地委員会の運動がありました。この結果、1890年には全私有地の75%を白人が所有することになり、その後のサトウキビ産業拡大の下地となりました。

ハワイ王国にサトウキビ産業が勃興すると、ハワイは決定的な労働力不足に直面します。そこで農場主(企業)はハワイ王国の許可を得て、季節労働者(移民)の導入を開始しました。経営者が最初に雇用したのは地元住民でしたが、ハワイ人は欧米人のような労働経験がないため、仕事に慣れませんでした。

サトウキビの茎部分

1850年に王立ハワイ農業協会が設立され、減少しつつある原住民労働者を補うために中国人労働者を導入しました。1880年代に入ると中国移民の人口に占める割合が4分の1に達したため、今度は中国移民を抑制し、ポルトガル移民などを奨励しました。その後、アジアを中心とする、労働賃金の低い国から継続的に労働者を補いましたが、労働者は契約期間を終えると帰国するかホノルルへ移住したので、労働力はつねに不足しました。その後、日本人、朝鮮人、フィリピン人など、民族のバランスを取りつつ、より安い労働力を確保しながら、サトウキビ農場の運営は続きました。この政策が、今日の多民族社会の土台となりました。

やがてサトウキビは新興国の低価格攻勢に耐えられなくなり、一時は百箇所以上あったハワイ諸島のサトウキビ会社は次々に閉鎖されていきました。カウアイ島最後のサトウキビ工場が2009年閉鎖したあと、マウイ島のプウ・ネネにあるアレグザンダー&ボールドウィン社がただひとつ営業を続けてきました。1843年に設立された歴史ある会社ですが、運営の見通しが立たず、2016年にその歴史を閉じました。プウネネの砂糖工場前には2017年現在、砂糖博物館が残されており、砂糖産業の歴史を展示しています。

ススキに似た花穂

植物情報

ハワイ名:Kō
学名:Saccharum officinarum イネ科サトウキビ属
英名:Sugar cane
和名:サトウキビ、カンショ
原産地:ニューギニア / 伝統植物
特徴:多年草。草丈は3~5m、花穂のサイズは20~60cm。葉は細長く、鋸歯状。秋に先端からススキに似た穂をつける。水辺に植えられているサトウキビは非常に水分が多く、上品な甘みがある。産業用(土産用)のサトウキビは糖分は多いものの(茎部分に約15%)、固く糖度が高すぎ、生食にはあまり向かない。

 

 

※トップ画像はマウイ島プウネネにある最後の砂糖工場跡でです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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