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所用時間5min
2015.05.15

アナ牧場

ハワイ島、女性経営の歴史ある牧場

  • ハワイ島の牧場の歴史
     
  • 女性経営の牧場
     
  • パウライダーという歴史的、文化的な乗馬の伝承

 

ハワイ諸島にはポリネシアから持ち込まれた動物が数種類いましたが、まだ牛や馬がいない時代でした。キャプテンクック一行がハワイに上陸したのが、1778年。その時に同乗していたジョージ・バンクーバーはその後、数度に渡り、ハワイに渡航し、カメハメハ1世などと時間を過ごました。その間、数頭のヤギやカモなども持ち込みましたが、1794年にはハワイ島に5頭の雌牛と1頭の雄牛を持ち込み、カメハメハ1世に献上しました。そこからハワイ島の牧場文化が始まりました。

ハワイ島のカヴァイハエ(海岸の近く)やノースコハラより、標高約815mのワイメアは涼しく、降雨量もあり、草原もあるということで、カメハメハ1世に献上した牛を、ワイメアに持ち込み、飼育することを意見しました。 地元のハワイアンには王のタブー(=王による法律)を作り、その牛を勝手に殺して食べたりしないようという法律を作りました。それから30年後には牛が増え、 ワイメアの谷やマウナケアの裾野などに野生化していきました。

 

そして1803年には馬がハワイに持ち込まれ、1830年頃にはハワイでも乗馬ができるようになりました。カメハメハ3世はメキシコからいわゆるカウボーイを連れて来て、ハワイの人々に乗馬を教え、カウボーイとして調教し、野生の牛をコントロールしたと言われています。ハワイではカウボーイの事をパニオロと言いますが、これもスペイン語が語源と言われています。

 

その後1847年にパーカー牧場が作られ、アメリカでは最大級規模の大きさで歴史ある牧場となりました。

 

アナ牧場の歴史は19世紀の始めに英国人の男性が、ハワイアンの女性と結婚した頃から始まります。1858年に現在のアナ牧場はアナ・レイアロハ・リンジイ・ペリー・フィスキの曾祖父母が現在の場所に土地を買ったことより始まりました。アナは1900年にヒロで生まれ、アナ牧場で育ちました。小さい時からカウボーイと呼ばれたいと願い、14歳の時に乗馬している写真が今でもあり、乗馬が日常でした。アナは当時より「牧場のファーストレディー」と言われ、カウガール、ジョッキー、パウライダー、肉屋、コミュニュティリーダー、牧場主という肩書きを持っていました。

 

パウライダーのアナの肖像画

アナ牧場のヒストリック・ホームには、アナの大きな肖像画が掛けられていますが、パウライダーというハワイの特殊な乗馬姿です。このパウライダーという乗馬は、どちらかと言うとショー的要素が多くあります。パウ(Pa'u)はハワイ語でスカートの事ですが、スカートとして作られたものではなく、1枚のサロンをパンツ状に結び、スカートパンツにして、馬に乗るというのがパウライダーです。歴史を遡ると、王族の女性達がこのパウを着て乗馬をすることから始められたと言います。この伝統を広めるために、アナはパウスカートのはき方や乗馬などをパレードで披露したり、デモンストレーションをする事を続けたそうです。アナは1995年に95歳で亡くなりましたが、85歳くらいまでは乗馬をし、一生乗馬を楽しみ、伝統を守った人生だったと言われています。

 

アナの両親は立て続けに亡くなりました。それからは、父親の兄弟も牧場経営に行き詰まり、経営が破綻する手前でした。アナは牛の解体をする従業員も雇えなくなり、すべて牧場経営を一人でやっていたりしていましたが、1943年にライマン・ペリーフィスクと再婚しました。

 

それからは経営を見直し、ライマンからのアドバイスもあり、大きな種類の牛を育てたりと経営の再建を図りました。そのかいあって、牧場は持ち直し、アナの亡くなった1995年まではアナ牧場としての経営が続きました。その後アナとライマンには子供がいなかったため、規模は小さくなりましたが、今でも牧場として経営を続けています。

 

ヒストリック・ホームの内観

アナ牧場は後にヘリテージセンターとなり、牧場の歴史、パウライダーの伝統などを伝え続けています。また、アナはアメリカン・ハートアソシエーションやHPA(ハワイ島の私立校)などへのチャリティーイベントなどを積極的に行っていました。アナランチは2005年にハワイ州の歴史登録財に指定され、2008年には国の歴史登録財に指定されました。

 

ヒストリック・ホームには、アナとアナの家族3代以上が大切に持っていたコアウッドで作られた貴重な家具の数々、陶器、乗馬の道具やサドル、アンティーク家具、帽子のコレクション等など、貴重な調度品の数々が飾られています。

現在のアナ牧場は、アナが亡くなってからアナホール、駐車場、トイレなどが増設されています。ギフトショップはキッチンだった場所なので、流しやストーブの跡などがあります。

 

ガイドツアーは火曜日~金曜日の午前10時、午後1時に開催。ガイドツアーのみ、ヒストリカル・ホームの見学ができます。ハワイ島の歴史には欠かすことのできない、牧場の歴史や文化を学ぶ事ができる貴重な場所です。

 

トロフィーの数々や、アナが実際に来ていた乗馬時の衣装も展示

 

Anna Ranch

65-1480 Kawaihae Road
Kamuela, HI 96743
Tel: 808-885-4426(英語のみ)
ホームページ: http://www.annaranch.org 
営業日: 火曜日~金曜日10時~15時
ツアー: 火曜日~金曜日、10時と13時(英語のみ)。要予約。
料金は$10

 

参考資料:

Hawaii’s Incredible Anna by Ruth M. Tabrah – Press Pacifica

 

  • 藤原 小百合 アン
    Anne Sayuri Fujiwara
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。メリーランド大学学士号取得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。ハワイ、日本でのレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。15年以上、パシフィックリゾートの「キルトパラダイス」(http://www.holoholo.world/kawaraban/category/quilt/)を連載中。 日本でハワイアンキルト本を数冊出版。2006年よりホノルルフェスティバルにおける伝統的ハワイアンキルト展を毎年開催。2013年よりイオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを始め、現在ハワイ在住31年目。

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