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2016.05.16

カヒリ

アリイの居るところには必ずカヒリがありました

  • カヒリは、アリイもしくは王族の威信と存在を示すしるしでした

6月のカメハメハデーや9月のアロハフェスティバルの行事やパレードには、毎年その年の王族に選ばれた人達が、アフウラ(ケープ)やマヒオレ(帽子)、レイを着けて参加しますが、その周囲には棒の先に鳥の羽を飾った「カヒリ」(kāhili) を持った人が必ず控えています。

アロハフェスティバル開会式典(2011年)の様子。王族の周囲にカヒリが見られる

カヒリは、アリイもしくは王族の象徴として、その人のマナ=力が宿るものと信じられていました。棒の先に飾られる羽は、ハワイ固有種の鳥ばかりでなく、捕るのが難しい海鳥、西欧人が来島してからは孔雀や外来種の鳥のものも使われ、染めてから使用されたものもありました。鳥の羽を根元で結び、棒に結わいつけて作られていますが、小さな羽毛の場合は、樹脂などで接着して作成されています。

権力者の象徴としてのカヒリの伝統は、タヒチやマルケサスの島々から伝わってきたものだと考えられており、タヒチ語では、これをタヒリ(tahiri)、マルケサスではタヒイ(tahiʻi)と呼び、羽は付いていない棒状のものだったようです。

カヒリは大きく分けて二つ。長く大きなカヒリ クー(kāhili kū)と、手に持つサイズのカヒリ パア リマ(kāhili paʻa lima)もしくはカヒリ レレ(kāhili lele)と呼ばれるものがありました。ハワイ文化を正確に伝える絵画を数多く残したハーブ カネ氏(故人)が、カメハメハ大王の後方に従者がカヒリを持って同行する姿を描いていますので、この絵を見ると、どんな使われ方がなされたのか解るでしょう。

ハーブ カネが描いたカメハメハ大王(ハワイ島コナ、キングカメハメハホテルの展示物より)

歴史的には、元々小型だった物が、大きな形態に変化してきたのですが、一方で75cmから1m30cmくらいの長さのものも引き続き使われ、王妃や王女が手に持つ姿の絵が幾つか残されていますし、カイウラニ王女の10歳の誕生日パーティーの写真には、従者がカヒリ パア リマを持って、立っている光景が写っています。

カイウラニ王女の10歳の誕生日パーティー(ビショップ博物館の展示物より)

1856年6月にカワイアハオ教会で挙行されたカメハメハ四世の結婚式の様子には、式を終えて退堂する夫妻を囲むように、カヒリを持つ多くの人達の隊列が見られます。

ハワイ王国が西欧化をしていく中では王家のダイニングルームの四隅にカヒリ クーを置くなどの使われ方もしていますし、王族ゆかりの教会の聖堂内にも多く見かけます。

カメハメハ四世結婚式後の退堂風景(ビショップ博物館の展示物より)

カヒリを持って王族に伴うのは高貴な若者が多かったようですが、男性の王族のものは男性が、女性の王族に属するものは女性が持つ習慣もありました。

カヒリは、王家の紋章にも描かれているのを、お気づきでしょう。紋章の左の人は槍を。そして右側の人はカヒリを持っています。イオラニ宮殿や、マウナアラの王家の墓地など、王国ゆかりの場所に行くと、門などにこの紋章が掲げられています。

ハワイ王国の紋章

付帯的な情報・発展情報

ワイキキには、ハワイの文化と歴史を重視したディスプレーを施しているホテルが幾つかあります。その中で、アウトリガー ワイキキビーチ リゾートには、フロントデスク近くにアウトリガーカヌーと共にカヒリが展示されています。

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  • 浅沼 正和
    Masakazu Asanuma
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    ハワイ在住通算27年目を迎える。2001年からビショップ博物館で日本語ドーセントのボランティアを始め、2003年に同博物館の会員組織を代表する Bishop Museum Association Council のメンバーに選出され、現在に至る。他に、ハワイ日米協会理事やハワイ日本文化センターのBoard of Governor 等を務め、日布間の文化交流活動に従事している。海外の訪問国と地域の数は95箇所に及ぶ。

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