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2017.11.02

猛禽類 (イオ、プエオ、他)

イオ

イオはノスリの仲間で、ハワイ諸島では数少ない猛禽類のひとつです。イオは絶滅危惧種に指定するほどではないものの、環境保全などの注意を必要とする状態にあります。また、イオに限らず、ハワイ固有の動植物は流入する圧倒的な量の外来種とのサバイバルを強いられていて、つねに絶滅への道と背中合わせです。

餌の捕り方はトビによく似ています。空中でホバリングしたり旋回しながら、地上のネズミや小型の野鳥、コオロギやカマキリ、ムカデなどの昆虫を探し、見つけると急降下して補食します。ハワイ名は彼らが「イーオー」と鳴くように聞こえることに由来します。鳴き声は繁殖期に頻繁に聞かれます。これはハワイミツスイなど、他の野鳥でも同じです。

学名に「単独の」とあるように、群れを作らずに過ごしますが、3月から9月にかけて巣作りを行います。卵は通常はひとつしか産みません。産んでから孵化するまで、メスは平均1ヶ月以上も卵を抱き続け、その間、オスは餌を運び続けます。卵が孵化すると、メスはオスが餌を持ってくるとき以外は拒絶するようになります。ヒナは7~8週間で羽根が生え揃い、半分から3分の2ほどが成鳥となります。厳しい環境を考えるなら、この数字はかなり高いと言ってよいでしょう。

ホノルルにはアメリカ合衆国で唯一となる宮殿があります。この建物はカメハメハ4世によって「イオラニ(天上から遣わされた高貴な鳥)」と名づけられました。このことからも分かるように、先住のハワイ人にとり、イオは神の使いともいうべき神聖な鳥でした。現在は、ハワイ島にのみ生息します、化石などから、かつてはオアフ島、モロカイ島、カウアイ島にも生息していたことが判明しています。

岩場で羽根を休めるイオ

動物情報

学名  :Buteo solitarius
     タカ科ノスリ属
ハワイ名:’Io
英名  :Hawaiian Hawk
和名  :ハワイノスリ
原産地 :ハワイ島固有種
特徴  :ノスリはタカの一種だが少し小柄で、クチバシや尾羽の形状などがタカと異なる。体長は40~45cm、翼長は50~60cm。オスはメスより少し小さい。日中は空の高いところを飛ぶが、オヒアの木をねぐらにすることが多い。イオの仲間は世界中にいるが、そのほとんどは背の部分が暗い色で腹部が明るい色の個体だ。しかしハワイのイオには2種類あり、全体が暗褐色の個体と、腹部が明るい個体とに分かれる。両個体とも、若鳥は脚の色は黄緑色で、成鳥になると黄色になる。また、明るい色のタイプの若鳥は頭部と腹部がクリーム色をしている。両者の個体数は同じくらいですが、絶対数はそれほど多くない。

獲物を探すイオ


プエオ

プエオはコミミズクの近縁です。ハワイの固有種です。かつては諸島全域に生息していましたが、いまは数を減らしています。オアフ島では絶滅危惧種に指定されています。プエオは草地の地面に巣を作り、1回に3個から6個の卵を産みます。しかし、マングースがこれを狙って食べたり、農地の耕運機やブルドーザーに踏みつぶされるという人的な被害があります。また、ヘッドライトに目が眩んで車にはねられる事故も少なくありません。さらには、プエオだけがかかるウィルス性の病気があり、種の保全に対する努力が続けられています。

プエオの体長はイオをひとまわり小さくした程度ですが、翼長はほぼ同じです。その鳴き声は犬の吠え声や、ケンカをするときのネコに似ていますが、ほとんど鳴くことはありません。コミミズクという名が表すように、プエオには小さな耳がありますが、羽毛のなかに隠れているため、あまり目立ちません。獲物は、ネズミやリスなどです。イオが空の高いところを旋回しながら地上を観察するのに対し、プエオは地上や地上に近い枝に止まって獲物を探します。特殊な羽毛を持つため、飛びかかるときはほとんど音を立てません。

フクロウやミミズクは闇に乗じて獲物を捕るというイメージがありますが、プエオは朝から夜まで、時間帯に関係なく狩をします。主なフィールドは牧場や草地など開けた場所です。それほど人を怖がらないので、運がよければ近くで観察することも可能です。先住のハワイ人にとり、プエオはイオと同じく神聖な鳥で、先祖の霊が宿ると信じられていました。

羽音を立てずに飛ぶプエオ

動物情報

学名  :Asio flammeus sandwichensis
     フクロウ科トラフズク属
ハワイ名:Pueo
英名  :Hawaiian short-eared owl
和名  :ハワイコミミズク、ハワイフクロウ
原産地 :ハワイ諸島
特徴  :体長は33~43cm。成鳥の羽毛は褐色と淡いクリーム色。羽根と尾に縞模様がある。目は黄色でくちばしは黒。脚は羽毛に覆われている。海岸から標高2,500mに生息する。

こちらを見つめるプエオ

 

 

※トップ画像は、獲物を見つけて急降下をする直前のイオです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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