マウイ島の歴史に彩られた博物館

60年前、大酋長カへキリの居住地跡に開館

マウイ島王族の本拠地だった、イアオ渓谷。その入口の町ワイルクにあるベイリーハウス博物館は、マウイ歴史協会が運営する、マウイを代表する博物館です。特に先史時代のハワイの遺物展示に関しては、ホノルルのビショップ博物館に次ぐハワイ第2の規模を誇るほか、マウイ島のキリスト教伝道の歴史を色濃く残す施設でもあります。その土地はかつて18世紀の大酋長カへキリの居住地があった場所で、土地＆建物そのものに、深い歴史が絡んでいます。

たとえば博物館の建物は元々、1833年、ハワイアンの子女にキリスト教の教えと家事全般を伝えるワイルク神学校の一部として建てられたものです。マウイ島での布教は、1823年にスタート。後年、若いハワイアンのため全寮制の学校の建設計画が持ち上がった際、マウイ島知事だった王族のホアピリ、そしてワイルクの酋長だったアウワエが神学校のために払い下げたのが、カへキリの居住地跡という一等地でした。

かつてはその土地から徒歩5分ほど行くとカへキリが崇拝していた古いヘイアウ跡（神殿）もあり、建築には、なんとヘイアウの岩が使われています。カメハメハ2世による古代宗教禁止令（1819年）以降、ヘイアウは廃墟になっており、瓦礫の山と化していたその岩が神学校の建設に使われることになったのでした。

厚さ50センチの外壁は溶岩と珊瑚を石膏で固めてあり、一説によるとハワイアン女性の長い髪も一緒に混ぜられ、さらに強化されているそう。内部の梁には、今では希少な白檀の木が使われています。

先史時代の生活用品のコレクションが見もの

先史時代の遺物を集めたケオプオラニルーム

館内はいくつかの部屋に分かれていますが、目玉は先史時代の遺物を集めたケオプオラニルーム。ここには見事なカパ（ワウケの木の皮から作った布代わりのもの）や、ポイ作りに使われたポイパウンダー、石製の器など石の生活用具、鳥の羽や貝で作られた工芸品などが展示されています。

岩などは一見、ただの岩に見えますが、かなりユニークなものがいくつもあります。たとえば夜間の侵入者から家を守るため、入口の上からぶら下げられていたという岩。さらに持ち上げたり投げた距離を競うために使われた大きな球状の岩、ペトログリフ（岩面に刻まれた絵）入りの岩なども必見です。

ペトログリフ入りの岩は以前、多数のペトログリフが残るオロヴァルの史跡の一部だったもの。誰かが削って持ち去り、後に返還されたといういわく付きです。これら先史時代の遺物は全て、マウイ島で発見されたものだそうです。

ほかに建物の中で最初に完成した部分で、石膏で固められたヘイアウの岩の肌合いがそのまま残るケオニルーム、優れた画家でもあったベイリー牧師の油絵を多数展示したカへキリルーム、王国時代の調度品、王国時代のドキュメンタリー映画などが見られるカワナナコアルーム、ベッドやドレッサーなど宣教師時代のコアウッドが見もののケポイカイルームなどがあります。

また建物の外には、現代サーフィンの父、デューク・カハナモクの使ったサーフボードや、100年以上も前に造られたカヌーも。ハワイ原産の植物が茂る庭も、ぜひ散策してみましょう。

日によってはドーセントガイドによるツアーがあるので、参加してみてください。英語のみのツアーとなりますが、展示内容の理解がグッと深まること請け合いです。ツアーの決まったスケジュールはないので、訪問時に確認しましょう。

付帯的な情報・発展情報

住所：2375A Main St., Wailuku　電話：808-244-3326　開館時間：10時～16時　休館：日曜
料金など詳細はhttps://www.mauimuseum.orgで。