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2016.11.21

昆虫類・両生類・爬虫類

昆虫類・両生類・爬虫類

ハワイ諸島は人が住み着くまで大陸や他の島々の影響をほとんど受けませんした。そのため、動植物が定着する確率は極めて低く、一度定着したものは外来種の影響を受けることなく、安定した環境を手に入れることができました。

ショウジョウバエ(Drosophia grimshawi)オス / picture by "Hawaiian Insects And Their Kin"

昆虫類についてはショウジョウバエの種類が抜きん出て多く、世界に約2600種いるうち、ハワイにはその5分の1ほどにあたる500種が生息します。新種であることが判明していながら学名が登録されていない300種を加えると800種、さらに、環境的に新たな新種が発見される可能性が200種ほどあると言われているため、世界の約3分の1のショウジョウバエがハワイ諸島に生息していることになります。

ショウジョウバエがいつからハワイ諸島にどのような経緯で諸島に広がったかについては解明されています。それによると、最初にカウアイ島に生息し、そこから順に南東部のハワイ島まで分散しました。ハワイのショウジョウバエのうち、もっとも古いものは2400万年も前ということが、遺伝子工学的に判明しています。これはカウアイ島が出現するよりも古いことを意味します。北西ハワイ諸島をたどってハワイ諸島に達したわずかな種(しゅ)が、少しずつ種分化して今日の1000種になったのです。

ショウジョウバエを含むハワイ固有の昆虫類はおよそ5000種。全昆虫に占める固有種率は99%にも上ります。しかし、上に書いたように、ハワイの特殊な立地のせいで、あらゆる昆虫がまんべんなく見られるわけではありません。地球上で見られる全昆虫のうち、グループ(科)の15%ほどしか生息していないのです。アリやアゲハチョウ、コガネムシ、セミ、カゲロウなど、日本でポピュラーな昆虫は存在しません。

シャクガ(Eupithecia staurophragma)/ Picture by "Hawaiian Insects And Their Kin"

ハワイの環境で特殊な性質を獲得した昆虫もいます。たとえばシャクガの幼虫には、ハエを捕食するものがいます。屍体を食べるのではなく、文字通り飛びかかって捕まえるのです。シャクガのようなイモムシの仲間は、日本でもよく知られるように、特定の植物の葉を食べて育ちます。しかし、シャクガはハエをはじめとする18種の昆虫を捕食します。

きわめて短期間に異なる種(しゅ)に変化した昆虫もいます。メイガ(蛾)の一種は熱帯地域においてはヤシやマメ科の植物の葉を食べますが、ハワイにおいてはバナナの葉のみを食べます。しかし、バナナはハワイに固有の植物ではなく、ポリネシア人が持ち込んだものとされます。史実が正しいのであれば、メイガは、1600年という人の歴史のなかで性質を変化させたことになります。

カメハメハ・バタフライ(Vanessa tameamea)/ Picture by "Hawaiian Insects And Their Kin"

ハワイ固有のチョウの種類はきわめて限られ、カメハメハ大王の名を取ったカメハメハチョウ(タテハチョウの仲間)と、ウダラ・ブラックブルニ(シジミチョウの仲間)の2種しかいません。固有のトンボについては、イトトンボの仲間が数種類いますが、シオカラトンボやヤンマ類などはすべて外来種です。

クモ類については人が笑っているような顔をしたクモ(ハッピー・フェイス・スパイダー)のほか、十数種が生息しています。

ジャクソン・カメレオン(Chamaeleo jacksonii)

両生類や爬虫類は今日のハワイではとてもよく知られていますが、ハワイ固有種はゼロです。人の手に寄るもの以外にハワイ諸島に到来することはありませんでした。ただし、帰化種については、両生類が4種、爬虫類が13種います。

ハワイのカエルのなかでもっともよく知られているのはハワイ島を中心に、急速に生息範囲を広げているコキ・フロッグ(プエルトリコ原産のコキコヤスガエル)でしょう。このカエルはなんと1月に2度近く子どもを産みます。しかも水たまりを必要としないので、ハワイ島では瞬く間に拡散してしまいました。世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されています。ちなみに鳴くのはオスだけです。

両生類や爬虫類にはこの他に、ヤモリやイモリなどの外来種と、アオウミガメやアカウミガメ、タイマイなど、海生のウミガメなどがいます。また、ペットとして導入されたジャクソン・カメレオンも野生化し、急速に分布域を広げているため、有害動物に指定されています。

 

トップ画像は、コキ・フロッグ(Eleutherodactylus coqui)です。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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