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所用時間5min
2014.10.08

ヘンリー・オプカハイア

ハワイ語表記の基礎も作ったハワイアン初のクリスチャン

  • ヘンリー・オプカハイアはハワイアン初のクリスチャン。
     
  • ヘンリーがハワイでの布教を熱望したことが、プロテスタント宣教師のハワイ派遣のきっかけになった。
     
  • 布教のため、ヘンリーと友人の宣教師が開発したハワイ語のアルファベット表記により、ハワイ語が初めて文書に記されるようになった。


カフナ修行を抜け出してコネチカットへ

ハワイにキリスト教宣教師が到来したのは、1820年。ハワイ島カイルア・コナに、ボストンからのプロテスタント宣教師団が初上陸しました。その宣教師団のハワイ訪問のきっかけを作ったのが、ハワイ島生まれのハワイアン青年、ヘンリー・オプカハイア。コネチカット州の神学校で学んだヘンリーは、ネイティブ・ハワイアン初のクリスチャンとして、全米でもその名を知られています。


ヘンリーは1792年、ハワイ島のケアラケクア湾近くで生まれました。10歳の時に村が戦いに巻き込まれて両親が目の前で殺され、自分の背中に背負っていた弟も犠牲に。敵の捕虜になったヘンリーですが、近くにあったヒキアウ・ヘイアウ(神殿)のカフナ(神官)が実の伯父であることが判明。伯父に引き取られることになりました。ちなみにヒキアウ・ヘイアウは、1778年にケアラケクア湾にやってきたイギリスのクック船長がロノ神と間違えられ、儀式が催された大きなヘイアウです。

ホノルルのカワイアハオ教会に展示されている
ヘンリー・オプカハイアの肖像画

ハワイ布教を夢見ながら逝く

コネチカットに移り住んで数年後。ヘンリーはイエール大学の神学生エドウィン・ドゥワイトと知り合い、キリスト教に関心を抱き始めます。ハワイの原始宗教を捨て、クリスチャンとしての強固な信仰を抱いたヘンリーは、海外への布教が検討されていた時期だったこともあり、コネチカットのキリスト教社会に広く受け入れられることに。各地の教会でスピーチする機会を与えられたほか、教会関係者の提案で、旧約聖書中の創世記をハワイ語に翻訳することもしました。

 

そのために1814年から、ヘンリーは同年代のアメリカ人宣教師、サミュエル・ラグルスとともにハワイ語のアルファベット表記を考案。ハワイ語の文法、語彙の辞典のようなものも同時に作り始めました。(サミュエル・ラグルスは1820年、ハワイ島に上陸した初の宣教師団に参加し、15年間にわたってハワイで布教しています。ヘンリーの訳した創世記や、2人が作成したハワイ語の辞典が、宣教師団のハワイでの布教を大いに助けたことは言うまでもありません。)

 

そして1817年に外国人向けの神学校が設立されると、ヘンリーはその第一期生として入学。いつしか牧師として、故郷ハワイにキリストの教えを広めることを夢見るようになりました。学校にはヘンリーをはじめとしたハワイアン、ポリネシアン、アメリカ・インディアンの学生らがおり、初代学長は、イエール大学神学生だった知人のエドウィン・ドゥワイトでした。

 

ですがヘンリーが故郷の土を踏むことは、2度とありませんでした。1818年、チフスで命を落としたからです。わずか26歳の時のことでした。それまでに完成していた自伝はヘンリーの死後、エドウィン・ドゥワイトの手で出版され、全米で評判となりました。それがハワイへの宣教師団派遣の動きに拍車をかけ、また売り上げは派遣費用の一環としても使われたそうです。

 

こうして志半ばで逝ったヘンリー。ハワイに戻って布教するというヘンリーの夢こそ叶いませんでしたが、ヘンリーの活動が実ってハワイに宣教師団がやってくるようになったのは、紛れもない事実です。永らくコネチカット州に埋葬されていたヘンリーの亡骸は、1993年にようやくハワイに戻され、今は故郷ケアラケクア湾を見下ろす小高い丘で静かに眠っています。

付帯的な情報・発展情報

カフナになる修行も受けていたヘンリー。チャントの詠唱など、暗記も重要な一部ですから、コネチカットでの英語習得にはそれも役に立ったのでしょう。
もっとも旧約聖書の創世記翻訳は、ヘブライ語からの翻訳だったよう。ヘンリーはラテン語も学んでいたといいますから、記憶力に加え語学の才もあったようです。

  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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