講座詳細

受講履歴を確認する
所用時間5min
2015.03.11

アウマクア信仰

  • アウマクアとは先祖の霊のこと
  • 動物や植物などの姿を借りてこの世に戻り、子孫の危機を救う
  • 各家庭がそれぞれ異なるアウマクアを崇めていた

各ファミリーにいたアウマクア
ハワイ古来の宗教概念の一つに、アウマクアがあります。アウマクアとは家族神、先祖神のこと。亡くなった家族、先祖が神となり、子孫を見守っているという考えで、日本風に「ご先祖様の霊」と解釈するとわかりやすいでしょうか。
 

ただしハワイのアウマクアは、先祖の霊が鮫やフクロウ、トカゲ、マッドヘン(クイナ科の鳥)、ある種のネズミや芋虫などに姿を変えてこの世に戻ってくるとされる点が特徴です。先祖が動物に生まれ変わるのではなく、先祖の霊がそれらの身体を借りて子孫の前に現れると考えられています(もちろん、人間の姿のままで現れる先祖もアウマクアと呼ばれます)。

ビショップ博物館ハワイアンホールにもアウマクア
のセクションがある

アウマクアは子孫の危機に現れて助けてくれたり、事前に夢の中で警告を与えたり。たとえば鮫をアウマクアとして崇める家族では、アウマクアが守っているため海で死ぬことはない、と信じているそうです。
 

各ハワイアン家庭に特定のアウマクアがいましたが、複数のこともあり、たとえばハワイ文化の権威、故メリー・カヴェナ・プクイの一家には、50種ものアウマクアがいたとか。
 

古来、家族間の絆が強いハワイ。アウマクアへの信頼もそれは篤く、大昔のハワイで人々が日常生活の中で困った時にまず頼るのが、アウマクアでした。プクイ女史らが記したハワイ文化の名典「ナー・ナー・イ・ケ・クム」での説明を引用すると、「海の潮流を引き起こすのは海の神カナロアだが、海で引き潮に流されそうになった人が助けを求めるのは、アウマクアだ」。
 

神々はこの世の摂理などを司る、遠く畏れ多い存在なのに対し、アウマクアはグッと身近な存在の神霊として心の拠り所とされていました。以下の「ナー・ナー・イ・ケ・クム」中の記述にもアウマクアが如実に説明されています。
 

「先祖はあの世に住み、神となる。神霊として驚くべき力を持つが、私達の先祖なのは永遠に変わりなく、自分の赤ん坊や初孫に祖父が感じるような愛と懸念を、抱いてくれている。神と親戚が一つになった存在として、私達が弱っている時は強さを、危機が迫れば警告を与え、慌てていれば導き、芸術のインスピレーションも与えてくれる」

数々の神話に登場するアウマクア
実際、昔からアウマクアに助けられた人の事例がたくさん報告されており、プクイ女史自身も、アウマクアであるフクロウに警告されて家路を急ぐと、子供が病気になっていた、という経験があるとか。プクイ女史は子供時代から、近くに現れたフクロウの様子に気を配るよう、家族から教わってきたとのこと。ある時、フクロウがおかしな鳴き方をしたので気になって家に帰ったら、子供が熱を出していたそうです。

またハワイ語新聞、カ・ヌペパ・クオコアに1906年に掲載された一家の話として、カヌーが転覆して海に投げ出された一家を、アウマクアのフクロウ、そして鮫が陸地に導いた例などが紹介されています。フクロウは陸の方向を教え、子供達は鮫の背びれに捕まって泳いだそうです。

アウマクアは、神話にもたびたび登場します。たとえばマノアの虹のプリンセスの物語「カハラオプナ」には、恋人に殺されるたびカハラオプナを蘇生させる、フクロウのアウマクアが出てきます。ほかに、カウアイ島から連れ去られた捕虜達のアウマクアがパンチボウル上に出現。怯えたオアフ軍から捕虜を救うという「パンチボウルで踊る幽霊」の物語も有名です。
 

以上のように、古来、ハワイの宗教上、そして日常生活の中で大変大きな部分を占めてきたアウマクア信仰。ハワイ文化の殿堂であるビショップ博物館にも、アウマクアに関するセクションが設けられているので、ぜひチェックしてみてください。

ビショップ博物館庭にある鮫の神の石像。
多くの家族が鮫をアウマクアとして崇める

付帯的な情報・発展情報

アウマクアは子孫を助けるだけでなく、先祖をないがしろにする子孫を罰することもありました。たとえば鮫をアウマクアとする一家が鮫を食べたら、アウマクアはその子孫を見捨てたということです。

  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセント(水曜日担当)も務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

関連講座
メンバー登録してアロハプログラムを楽しもう!

ハワイについて学ぶならまずはメンバー登録がおすすめ!