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カロ
カロ
ハワイアン フードに欠かせない「ポイ」をご存知でしょう。「タロ」芋のことをハワイでは一般的に「カロ」と発音します。それを叩いて磨り潰しペースト状にしたものが「ポイ」です。
カロ畑
収穫して根(芋)の部分を切り取った茎。これを再度水田に植え戻すと又、芋が出来る。
ネイティブ ハワイアンの人々は、「ロイ カロ」と呼ばれるアジアの米作にも似た水田を作り、タロイモを栽培していました。傾斜地に土を盛ったり石組みをして畦を作り、ハワイアンの共同生活区域「アフプアア」の境界線でもある山の峯々から流れ出る清水を、川から灌漑用水として引き込み、上の水田からその下の水田へと流して、元の川に戻します。水田の養分を含んだ水は川を下り養魚場を潤す、清水の有効な利用法でした。
クウ アイ(ビショップ博物館の展示物より)
カロを潰してポイを作る為の板(ビショップ博物館に展示してある写真より)
ポイを作っているところ(ビショップ博物館に展示してある写真より)
ウメケ(ビショップ博物館の展示物より)
水田で大きく成長した芋を引き抜き、洗って皮を剥き、内側が少し窪んだ木の板の上で、石で造られた「クイ アイ」と呼ばれる道具で叩いて、水を加えつつ軟らかくしていきます。出来上がったポイは「ウメケ」とよばれる木の器に入れておきます。かなり粘り気がありますので、人差し指と中指ですくって口へ運びます。一種類のお芋だと思うと大間違え。水田ばかりでなく、畑で取れる種類も有り、色や味、香りにより、三百もの種別があったそうで、上等なものは王様や上位の人達に供されていました。
カロは、ハワイの人々にとっての創世記とも云える神話「クムリポ」にも語り伝えられているように、彼らの生活様式に大いに影響を与える大変重要な植物でもありました。ハワイ王国第七番目の王カラーカウアは、ご自身と同胞のルーツをカロの言い伝えに見出し、1883年にイオラニ宮殿で戴冠式を挙行した際の王冠には、その葉の文様が印されています。そして、自分達の文化の源でもあり、祖先から脈々と続く重要な食べ物であったカロの栽培はカメハメハ校を始めとするハワイアン子弟の学校やクラブ活動での教育や実習を通じて、次の世代へと受け継がれています。
ハワイやポリネシアの島々に古来より伝わる習慣として、食事を作るのは男性の仕事でした。ポイを作るのも男性です。それ以外にもハワイには「アイ カプ」と呼ばれる食事に関する様々な習慣が見られました。男女お互いの「マナ」=「神から与えられた力」を尊重し合い女性と男性が食事の席を同じくすることはせず、家族「オハナ」や同じ集落の人々は、男女分かれて食事をしていました。この習慣はカメハメハ大王が亡くなった直後まで続き、宣教師が来島する前、1819年にハワイアンの生活様式から消滅していきました。
【 ハワイ語一口メモ 】
「アイ カプ」の「アイ」は食べ物、「カプ」は禁制や社会規範を意味しますが、神により定められた、もしくは神聖な、との意味合いを含みます。「アイ」は食べ物全般を意味しますが、同時にハワイアンの人々にとって一番重要な食べ物「カロ」その物を指す言葉でもあります。
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浅沼 正和Masakazu Asanuma担当講師
【インタビュー動画あり】
ハワイ在住通算27年目を迎える。2001年からビショップ博物館で日本語ドーセントのボランティアを始め、2003年に同博物館の会員組織を代表する Bishop Museum Association Council のメンバーに選出され、21年間務めた。他に、ハワイ日米協会理事やハワイ日本文化センターのBoard of Governor 等を務め、日布間の文化交流活動に従事している。海外の訪問国と地域の数は95箇所に及ぶ。