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2017.01.04

絶滅危惧種と絶滅種(動物)

絶滅危惧種と絶滅種

植物の項目でお伝えしたように、ハワイ諸島は周囲の陸地から3000km以上も離れた絶海の孤島(大洋島)です。そのため、動植物が定着する確率はきわめて低いのです。見方を変えるなら、一度定着すると、外敵に襲われることなく、安定した自然環境を得ることができます。やがて、ハワイに固有の動物は、同じくハワイに固有の植物との間に安定した共生関係を作り上げました。決まった場所の決まった植物に、決まった鳥や昆虫が来るということです。植物の側でも動物の側でも決まった相手が用意されているのです。大陸のように動植物がつねに淘汰されるような環境では、必要とした特定の植物がなくなれば別の植物で代用します。すべての動植物はこのような柔軟性を持ちます。同じように、ある動物がいなくなれば、別の動物が代わりの役割を果たします。

しかし、ハワイ諸島のように安定的で固定された環境では、ひとたび侵入動植物が出現すると、連鎖反応的に環境が破壊され、その結果、特定の植物に依存していた動植物は、共生関係が壊れると生息数が激減します。たとえばパリラという山鳥はマーマネの実を食べます。マーマネが山火事で大きな被害をこうむったときは、パリラも大きく生息数を減らしました。今日のハワイの自然は、多くの外来種の侵入により、ハワイ固有種が絶滅の危機に陥ったり絶滅するなど、とても脆弱な状態にあります。これは固有種の多い環境に宿命的な現象でもあります。

絶滅種

オオ(ハワイミツスイの1種)

ハワイミツスイはハワイ固有の鳥で、ハワイ諸島にはかつて20属50種以上が生息していました。この鳥はアメリカ大陸から到来したただ1種の鳥が共通の祖先です。定着した環境に順応して種分化し、羽毛や形状、サイズ、クチバシの形などを、餌の種類などによって多様に変化させました。しかし、先住のハワイ人が羽毛を取る目的で捕獲したのをはじめ、その後にハワイ諸島に住み着いた人々によって、森林を中心とする生息地を奪われました。これに追い討ちをかけるように外来の鳥類が持ち込んだ鳥マラリアなどの感染症が発生し、多くの種が絶滅したのです。18世紀末にキャプテン・クックの一行が調査した時点では41種の生存が確認されていましたが、その後に17種が絶滅し、さらに13種が絶滅寸前にあります。

たとえばオオ(アトリ科ハワイミツスイ属、学名:Moho braccatus、ハワイ名:O`o、和名:キモモミツスイ)は、20世紀初頭までカウアイ島に生息していましたが、1985年に絶滅が宣言されました。絶滅の直接的な原因はネズミや野ブタ、伝染病を媒介する蚊などです。

ラナイ島に生息していたラナイマシコ(アトリ科ハワイミツスイ属、学名: Dysmorodrepanis munroi、和名:ラナイマシコ)は、クチバシの形状からも分かるように、花密ではなくハワイ固有の陸生巻き貝や木の実などを食べました。しかし主食である巻き貝が絶滅したため、ラナイマシコも絶滅したとされます。最後に観察されたのは1913年です。

この他に、レイサンクイナ(クイナ科、絶滅年:1944年)、カウアイアキアロア(アトリ科、絶滅年:1969年)、カカワヒエ(アトリ科、絶滅年:1963年)、マモ(アトリ科、絶滅年:1907年)、オアフ・ヌクプウ(アトリ科、絶滅年:1837年)なども同じ運命を辿りました。昆虫の世界ではショウジョウバエ(約1000種)のうちの数種がすでに絶滅しました。この他に、アシナガバエの仲間(絶滅年:1973年)、ゾウムシの仲間2種(絶滅年:1961年と1964年)、コナカイガラムシの仲間(絶滅年:1913年)、メクラカメムシの仲間(絶滅年:1936年)、イトトンボの仲間(絶滅年:1917年)、ハワイマイマイの仲間2種(絶滅年:1949年と1981年)などが、20世紀に絶滅しています。

絶滅危惧種

アララ(ハワイガラス) by Wikipedia

野鳥類ではアララという名のハワイガラスや、フクロウの仲間のプエオ、タカの仲間のイオ(ハワイノスリ)、その他多くのハワイミツスイの仲間などの鳥類がいます。ハワイの国鳥であるネネ(ハワイガン)は現在十分な生息数に達していますが、野生種は絶滅しており、現在生息しているのは飼育種を繁殖させたものです。昆虫では樹上性のカタツムリ(ハワイマイマイ)やハワイメンハナバチなど、ショウジョウバエの仲間、など、海生哺乳類ではハワイモンクアザラシなどがいます。このうち、ハワイマイマイはかつて750種もいましたが、現在はアフリカマイマイなどに捕食され、絶滅したり、絶滅の危機にあるものがほとんどです。20世紀以降に限っても約40種が絶滅しています。

哺乳類ではハワイ語でオペアペアと呼ばれるハワイオオコウモリ(オオコウモリ科フルーツコウモリ属)が1970年に絶滅危惧種に指定されました。陸棲の哺乳類としてはハワイ唯一の哺乳類です。海生哺乳類では、ハワイモンクアザラシ(アザラシ科モンクアザラシ属)がいます。ハワイ諸島に定着したのは1500 万年ほど前とされ、今日の推定生息数は1300頭ほどとされます。1976 年に絶滅危惧種に指定されたあと、2008年にはハワイ州の哺乳類に指定されました。

※トップ画像はイーリオ・ホロ・イ・カ・ウアウア(ハワイモンクアザラシ)です。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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