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所用時間5min
2016.01.18

噴火と溶岩流

噴火と溶岩流

 ハワイ諸島は火山活動によって誕生しました。主要ハワイ諸島はもちろん、北西ハワイ諸島を含め、すべての島は地球内部のマグマ溜まりから上昇した溶岩によって造られました。地球のプレート移動とハワイ諸島の関係については「ハワイ諸島の誕生とプレートの移動」で触れましたが、ここでは噴き出した溶岩がどのように島を形成するかについてお話しします。

海に流れこむ溶岩

 ハワイの島々は一度の噴火で今日の形になったわけではありません。ひとつの噴火だけでできた島もありますが、大半は複数の火山活動が続き、その過程で形状が変化し続けた島も少なくありません。オアフ島を例に挙げると、最初に南西部にワイアナエ火山が出現しその成長を続ける過程で東部にコオラウ火山が誕生して成長を続け、ワイアナエ火山の大半を呑みこむ形で今日のコオラウ山系の骨格ができました。その後、島は一端沈降した後、氷期には海面低下に伴い土地を拡大し、その後、今日に至ります。

オアフ島の成長過程

リフトゾーン

 噴火は「山の頂から噴き上がる」というイメージがあります。今日、火山活動を続けているマウナ・ロアやフアラライ、キラウエアでは山頂付近で溶岩や噴煙を上げています。なかでもキラウエアでは山頂カルデラ内のハレマウマウ・クレーター周辺で活発な活動が続きます。しかし、火山活動は山頂だけではありません。リフトゾーンでも起こります。

 リフトゾーンとは、山頂の火口のほか、側火口噴や水蒸気爆発により爆裂火口、陥没によるピットクレーターなどが集中する帯状の地域を指します。キラウエア・カルデラには2つのリフトゾーンがあります。ひとつはイースト・リフトゾーン、もうひとつはサウスウエスト・リフトゾーンです。1980年代から2010年代にかけて観測された火山活動は、そのほとんどがイーストリフトゾーンで起きています。ハワイ島ではこの他、マウナ・ケアやマウナ・ロアにもリフトゾーンがあり、マウイ島のハレアカラにもあります。

 キラウエアの側方火山のひとつであるプウオーオーから流れ出した溶岩は、1983年に南岸のカラパナという町を呑みこんでしまいました。また、同じプウオーオーは、2015年にハワイ島南東部のパホアの町へ溶岩を流し、町の一部が埋まりました。活動は2016年現在も続いています。
 島をひとつの単位として見た場合、ハワイ島では今日に至るまで火山活動が続いています。マウイ島のハレアカラでは400年ほど前に噴煙と溶岩の噴出があり、火山活動は停止していません。オアフ島でもいまから5000年ほど前までホノルル市内に数あるクレーターは噴火活動をしていたことが判明しています。

地下のマグマが噴き出すプウオーオー火口

溶岩流と溶岩の種類

 地底のマグマ溜まりから上昇した溶岩は流量や温度、速度、大気と接触する割合、流れ出す表面の地形などによって性質を変えます。同一の噴出口であれば溶岩の性質は同じということもありません。刻一刻と性質を変えながら既存の溶岩(大地)を上塗りして広がります。溶岩流のうち、比較的滑らかで光沢があり、黒い色をした溶岩はパホエホエ(溶岩)と呼ばれます。これに対し、ガサガサとしていて、光沢がなく、赤い色をした溶岩はアア(溶岩)と呼ばれます。なかには、比較的赤い色をしたパホエホエもあれば、黒っぽいアアもあります。これらのハワイ語は火山用語として世界共通に用いられます。

 溶岩の種類は粘性で区別することもできます。粘性(粘り気)は、溶岩に含まれる二酸化ケイ素 / 珪酸(SiO2)の割合によって分けられます。ハワイ諸島はすべて玄武岩から成り立ちます。玄武岩とは、珪酸の含有量が全体の半分ほど(52%以下)の火山岩を指します。(※それよりも含有量が多いものは、順に安山岩、デイサイト、流紋岩と呼びます。)溶岩はどれほど高温でも1200度ほどですが、珪酸の融点は2000度を超すので、珪酸成分が多いほど、粘性は高くなります。ハワイの溶岩はアフリカのケニア山、韓国済州島の漢拏山と並び、地球上でもっとも粘性の低い溶岩のひとつとされます。なかでもマウナ・ロアとキラウエア火山を構成する溶岩の粘性はとくに低いため、簡単には固まらず、噴出した溶岩は水のように広がります。そのため、山は楯を伏せたようななだらかな山容(楯状火山)となります。

 噴火に伴う地震(火山性地震)も起きます。ただし、体感できる規模のものはそれほど多くありません。キラウエア火山にあるジャガー博物館には地震計が設置され、だれでも確認できるようになっています。溶岩は火山ガスも発生させます。その多く(99%~)は水蒸気ですが、一定の割合で二酸化硫黄(SO2)などの有毒ガスも含まれます。ハレマウマウ・クレーター周辺は二酸化硫黄が多いため、2016年現在、立ち入りが禁止されています。

内部に空洞を持つ玄武岩

トップの画像は、キラウエアの南麓を流れるプウオーオーからの溶岩流です。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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