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2015.09.17

マウイ1「マウイ、島々を釣り上げる」「ココナッツアイランドの伝説」「マウイ、天を持ち上げる」

半神半人マウイはハワイの英雄。多くの武勇伝、冒険談が伝わっている

  • 心優しく力持ちのマウイはハワイの英雄。
  • 人間を助けるために尽力した。
  • ポリネシアのほかの島々ににもマウイ神話が残る。

「マウイ、島々を釣り上げる」
マウイは純然たる神ではなく半神半人。母は世にも美しい女神、ヒナとされています。5人兄弟の末っ子のマウイは大変な母親思い。ヒナが困っていると、助けるのは決まってマウイでした。また母に限らず、人間の手助けをたくさんしたことでも知られます。ハワイだけではなくポリネシア中に、その偉業の物語が残っています。
 

たとえばハワイ諸島そのものも、マウイが大海から釣り上げたものなのだそうです。
 

大昔のこと。マウイは兄弟達とよく釣りに出かけていました。ですがマウイと一緒に海に出かけることを、兄達は嫌がっていました。マウイはあまり釣りが得意ではなかったからです。
 

そんなある日のこと。あの世に出かけて行き、先祖の手助けによって魔法の釣り針を手に入れたマウイ。それはマナイアカラニと呼ばれ、どんな大きな獲物も捕まえる、夢のような釣り針でした。マウイは張りきって兄達を誘い、カヌーでどんどんと沖に出て行きました。
 

しばらくすると、マウイの釣り針に手応えがありました! その魚はずいぶん大きいよう。グイグイと、釣竿を引っぱります。「かかったぞ!」。マウイは喜び勇み、兄達にカヌーを早く漕ぐよう、頼みました。そうしてどんどん引っぱると、やがて獲物が水の上に姿を見せました。それは何と、大きな陸地でした! 魔法の釣り針は大陸を、大海原の底から引きあげたのです。
 

兄達も獲物を見たがりましたが、マウイはよそ見をしないでカヌーを漕いでほしい、と懇願しました。ようやく、獲物をしっかり釣り上げたと思ったその瞬間。兄が獲物を見ようと振り返ったので、カヌーが大揺れ。獲物がバシャーン! と海に落ち、8つに砕けてしまいました。
 

その8つのかけらが、今、ハワイ諸島の主要8島として知られる島々とか。もしも大昔、マウイの獲物が海に落ちなければ…。今頃ハワイは、大きな大陸として存在していたかもしれません。


ちなみに夜空に輝くさそり座は、ハワイでは「マウイの釣り針」と呼ばれます。大昔のハワイアンは、夜空を見上げながら英雄マウイの偉業を思い起こしていたのでしょうか?
 

ココナッツアイランドの伝説」
「マウイ、島々を釣り上げる」の物語と関連性のある伝説として、ハワイ島ヒロ湾に浮かぶ小島ココナッツアイランド(モクオラ)の伝説が知られています。この島は、マウイの釣り針によってヒロ湾に引き寄せられたのだそうです。
 

昔、ハワイアンはカヌーによって島々を旅したわけですが、時間がかかり、人々が難儀しているのを見たマウイ。「島々がくっついていれば、もっと旅が楽になるのに…」と常々考えていました。
 

その当時、マウイはハワイ島に住んでいました。そこでマウイはハワイ島各地から力自慢の男達を集め、言い渡しました。「これから島々をカヌーで引き寄せて、一か所に集めることにする。まずは隣にあるマウイ島をここに引っぱってこよう」。
 

さっそくマウイが魔法の釣り針をマウイ島に引っ掛けると、力自慢の男達が乗ったカヌーに向かって命令しました。「どんどん引っぱってくれ! ただし絶対に、後ろを振り返ってはいけない。釣り針の魔力が薄れてしまう」。
 

男達がマウイの言いつけ通りにカヌーを漕ぐと、マウイ島がぐんぐん引き寄せられてきました。そしてもう少しでハワイ島にくっつく…というその時。男達の一人が後ろを振り返ったために魔法が解け、すぐそこに迫ってきていたマウイ島は、元の場所に戻ってしまいました。
 

その際、釣り針が引っかかっていたマウイ島の先端だけはヒロ湾に残り、今ではココナッツアイランドとして知られています。

ハワイ島ヒロ湾に浮かぶココナッツアイランドは、昔マウイ島の一部だった?

「マウイ、天を持ちあげる」
今のように空が高くなったのも、マウイのお陰とか。次のような物語が残っています。
 

昔々。マウイが子供だった時代は空がひどく低く、人々は腰をかがめて歩かなければなりませんでした。木々は空につかえ、横に曲がって伸びる始末。太陽も人々のすぐ上で輝いていたため、人間達は暑くて暑くて、いつもぐったりしていました。
 

そんな人々の様子を見ながら、「何か手を打たないとならないぞ」と毎日考えていたマウイ。ついにある日、自分で空を押し上げることを決意しました。そこでマウイは肩にグッと力をこめ、空をひと押し。空が少し高くなり、人間が立ち上がって歩けるようになりました。
 

さらにマウイが両腕に力を入れて空を押し上げると、空はいっそう高くなり、横に曲がっていた木々がピン! とまっすぐ背を伸ばすことができました。最後にマウイがもう一度押すと、空は遥か高くなり、壮大な山々が姿を現わしたのでした。
 

こうして世界は広々として明るくなり、人間達は大喜びした…ということです。

付帯的な情報・発展情報

ハワイ諸島中、神もしくは人の名前のついた島はマウイ島だけ。 南北の2島からなるニュージーランドにも似通った神話があり、北島はマオリ語でテ・イカオ・ア・マウイ(マウイの魚)、南島はテ・ワカ・ア・マウイ(マウイの舟)と呼ばれています。

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  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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