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2015.11.21

マカヒキ

マカヒキ

  • ハワイの創世記にもあたる神話「クムリポ」に現れる四大神の一つ、ロノの司るハワイの冬の季節マカヒキは、戦いを一切しない平和な時期でした。又、マカヒキは新たな年の始まりでもありました。

冬の数カ月、ハワイは平和な季節を迎えていました

北緯二十度付近に位置するハワイでは四季を楽しむことはないものの、夏と冬の違いは感じられます。冬になると太陽の光も肌を刺す感じは弱まりますし、日没もめっきり早くなります。ネイティヴハワイアンの人達にも彼らなりの季節感があったと思われます。毎年10月もしくは11月の半ばからは「マカヒキ」と呼ばれるシーズンの到来です。この時期には、古来の社会規範である「カプ」(kapu)により戦いは禁じられ、戦闘の神でもある「クー」(Kū) に替わり、平和や収穫の神「ロノ」(Lono) が、人々の生活を司る季節でした。
 

ロノ神は、ハワイ語で「カヒキ」(kahiki) と呼ばれる大海の遙か向こうから、白い布のようなものをたなびかせて、この時期にハワイに到来すると信じられていました。長く垂れさがる白い「カパ」(kapa) は、海の向こうの天国の雲を思い起こさせ、雲が広がれば収穫の神の恵みである雨が降って台地は潤い豊作をもたらす、と考えられていました。

ロノ神のイメージ(ビショップ博物館の展示物より)

マカヒキの時期には、大きなロノの像を掲げた一団がアリイ(aliʻi = 王 )と共に各島を時計回りに移動し、それぞれのアフプアアで住民の歓迎を受けて捧げものを受け、人々が興じるゲームを見て楽しむのが習わしになっていました。アリイは住民と交わり、自身の支配する地域の状況を把握する機会でもありました。このロノの像は、ハワイで越冬したクック船長の探検船に随行した画家により記録されています。

 

ロノ神とアリイへの捧げものは、タロ芋(kalo)、バナナ(maiʻa)、パンノキの実(ʻulu)や魚(iʻa)などの食糧、そして王が身に着けるケープ(ʻahu ʻula) や戦闘の帽子(mahiole) にも使われる貴重な羽毛(hulu)、釣り針(makau)、ポイ パウンダー(pōhaku kuʻi ʻai = タロ芋をつぶしてポイを作る道具)、カヌー(waʻa)、戦いの道具(Nā mea kaua)にも及んでいます。

 

さて、マカヒキのシーズンはいつ始まり、どのくらの期間、続いたのでしょう。文字が無かった昔のハワイです。言い伝えは種々ありますし、地域や島によっても習慣は違ったと考えられますが、天文や星座に詳しいカフナ(kahuna = 神官のような人も含まれる)が東の空を見て、日没後に太陽の光が失せてスバル星団が東の水平線上に見えた日、もしくはスバルが見えた日の次に現れる新月(hilo) の日から、マカヒキは始まった、と云う説が有力で、10月半ばに、その日が訪れます。但し、11月半ばにマカヒキが始まると伝えられている地域もあります。そして、マカヒキは月齢で4ヶ月ほど続きました。(これも、3ヶ月との説もあります。)イスラム教で、新月を見て断食月の始まりの日を定めるのに似ています。古今東西、民族や宗教を問わず、月の満ち欠けは人間の生活習慣に深く関わっていたのでしょう。

 

ところで、ハワイ諸島を西欧人として始めて発見して「サンドイッチ諸島」と命名した英国海軍のクック船長が、カウアイ島ワイメアに上陸したのは1778年1月。そして北米大陸西岸にそって北上してベーリング海峡の北、北緯70度まで測量調査をした後、越冬のためにハワイに戻ってきたのが同じ年の11月。翌年1月にハワイ島のカイルアコナの南、ケアラケクア湾に投錨。ちょうどマカヒキの時期と重なります。白い大きな帆を広げて大海の向こうから突然現れた二隻の見知らぬ大きな船を、白いカパを掲げたロノの到来だと信じたカフナたちは、クック船長を神と崇めて迎え入れたとも伝えられています。

付帯的な情報・発展情報

スバル星団は英語(ギリシャ語)でPleidesと云いますが、ハワイ語では「マカリイ」(Makaliʻi) と呼ばれます。
カパは、樹皮を叩いて伸ばして作る布のようなもの。ポリネシアには織物の技術はありませんでした。


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  • 浅沼 正和
    Masakazu Asanuma
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    ハワイ在住通算27年目を迎える。2001年からビショップ博物館で日本語ドーセントのボランティアを始め、2003年に同博物館の会員組織を代表する Bishop Museum Association Council のメンバーに選出され、現在に至る。他に、ハワイ日米協会理事やハワイ日本文化センターのBoard of Governor 等を務め、日布間の文化交流活動に従事している。海外の訪問国と地域の数は95箇所に及ぶ。

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