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2014.07.23

王家の女性達

ハワイ王国でリーダー的存在であった女性は?

  • ハワイが、外海から閉ざされたポリネシア北端の島々として独自の文化を育んでいた時分から、十九世紀に王国となり、西欧化が進み、ハワイ共和国から米合衆国の一部に組み込まれていくまで、王家には特筆すべき女性が何人か居りました。


ハワイが西欧化する前、ポリネシア人の婚姻関係は古来の習慣に基づき、現在の考え方とは全く違うものでした。最高位アリイ(首長)にとっては、王家の血筋を引く女性との結婚は、社会の頂点に立つ上でも重要だったと考えられます。又、「カプ」と呼ばれる社会規範により、男女の社会的役割は、はっきりと分けられていました。

 

カメハメハ大王にとっても、王家の血を引き、その中心的存在であったケオプオラニとの婚姻はこのような意味合いがあったのでしょう。ハワイ島からオアフ島までを統一した後に結婚したカメハメハとケオプオラニとの間に生まれた息子の「リホリホ」と「カウイケアオウリ」が、カメハメハ二世と三世として後継の王になっています。末娘の「ナヒエナエナ」は歴史上にはあまり登場しないものの、ハワイアンの人々の間では良く知られている存在です。

ナヒエナエナ(ビショップ博物館の展示物より)

カメハメハ大王の妻は、諸説あるものの、ビショップ博物館に展示されている系図では四人居たと記されています。その中で、ハワイ王国での影響力が最も強かったのは、ケオプオラニではなく、マウイ島ハナのアリイであったケエアウモクの娘「カアフマヌ」であったようです。

 

カアフマヌ(ビショップ博物館の展示物より)

当時「クヒナ ヌイ」と呼ばれる地位(役柄)がありました。これは王に対して助言を行なう、かなり権限、支配力のあるものでしたが、カメハメハ大王の没後、カアフマヌは「亡き大王は自分をその地位に就けたかった」と二世に迫り、有無を言わせずクヒナ ヌイに就任しました。1820年に宣教師が来島した後に、キリスト教がハワイで比較的対立を起こさずに定着したのも、前述の「カプ」制度が1819年に崩れ、西欧的に男女が共に食事をするようになったのも、王国のトップの座に居たカアフマヌの意志が大きく作用していたと思われます。

 

カメハメハ系の王の時代は、五世の死をもって途切れてしまいます。その頃カメハメハ系列の王女に、ルース ( Ruth ) ケエリコラニが居ました。母国語であるハワイ語を重視し、英語は理解するものの話さず、キリスト教にも改宗しなかった女性です。外国への旅行はしませんでしたが、世界中からの訪問者は暖かく迎え入れた王女だったと伝えられています。1881年には、火山の女神「ペレ」に祈りを捧げて溶岩を止め、ハワイ島ヒロの街を救ったとの逸話が伝えられています。

 

ルース(ビショップ博物館の展示物より)

カメハメハ系最後の王女、バニース パウアヒはルースの従妹にあたります。父「パキ」やカメハメハ五世とルースから、パウアヒに引き継がれた土地と財産は、かなりの額に及びました。パウアヒ王女の死後、彼女の遺言を基に、その財産は夫君のチャールズ リード ビショップ氏の下、ネイティヴ ハワイアンの子弟の教育に使われることになり、それにより創られた学校は、現在のカメハメハ スクール ( Kamehameha Schools ) に発展していきます。 

パウアヒ(ビショップ博物館の展示物より)

カラカウア系の王女では、王国崩壊時には英国に留学中で、その後ハワイに戻り23歳の若さで亡くなったカイウラニの名が良く知られているのではないでしょうか。スコットランド人のクレグホーン ( Archibald Scott Cleghorn )と 、カラカウア王とリリウオカラニ女王の末の妹「リケリケ」の娘です。歴史に「もし」は無いのですが、“もし”王国が長く継続し、若くして亡くなっていなければ、カイウラニが二人目のハワイ王国女王になるべき人物でした。

着物姿のカイウラニ(写真提供:ビショップ博物館)

  • 浅沼 正和
    Masakazu Asanuma
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    ハワイ在住通算27年目を迎える。2001年からビショップ博物館で日本語ドーセントのボランティアを始め、2003年に同博物館の会員組織を代表する Bishop Museum Association Council のメンバーに選出され、現在に至る。他に、ハワイ日米協会理事やハワイ日本文化センターのBoard of Governor 等を務め、日布間の文化交流活動に従事している。海外の訪問国と地域の数は95箇所に及ぶ。

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