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鳥類
絶滅の危機を脱することができないハワイ固有の鳥類
- ハワイ在来の鳥は約50種。そのほとんどが固有種です。ハワイに人間社会が広がると、鳥たちは植物と同じように大きなインパクトを受けました。その結果、絶滅した鳥もかなりいます。
- ハワイの鳥のなかには生息地が決まっているものがあり、島によってまったく見られないものもあります。
ハワイの鳥
ハワイには固有の鳥が50種ほど生息します。これに対し、外来種(迷い鳥を含む)は250種ほどが確認されています。植物と較べるとその割合は少ないものの、在来種が大きな影響をこうむっていることに変わりはありません。
海鳥や水鳥を除くほとんどの鳥は、ハワイ固有の植物と共存してきました。これらの植物が絶滅の危機に陥ると、共存する鳥たちも運命をともにすることになります。在来の鳥たちは縮小する原生自然のなかで、餌を探すために余分なエネルギーを費やすだけでなく、外来の鳥たちとの競争にも晒されます。そのため、多くが絶滅の危機に瀕しています。ハワイミツスイは羽根がマントの装飾に用いられたり、生息環境が縮小したたため、半数以上の種が絶滅しました。ネネもまた、マングースに卵を食べられ、野生環境のものは絶滅しました。いま生息しているものは飼育されていたものから繁殖させたものです。今日、国や自治体、各種の自然保護団体は、野生種の保護繁殖のためにさまざまな試みを続けています。
コアホウドリ(オアフ島カエナ岬)
海辺、水辺の鳥
鳥は空を移動するため、一部はハワイのような絶海の孤島にも飛来します。なかでも、コレア(ムナグロ)やモーリー(コアホウドリ)、アウケケ(キョウジョシギ)、ウーリリ(メリケンキアシシギ)などの渡り鳥は各島でよく見られます。
しかし、なかにはハワイの自然環境に適応して渡りを止めたものもいます。ネネ(ハワイガン)もそのひとつです。他島や大陸との移動を止めた鳥はハワイ諸島で独自の進化を果たし、ルーツとなる鳥とは別の性質や外観を獲得しました。
海鳥としてよく見られるものには、イヴァ(オオグンカンドリ)、アー(アカアシカツオドリ)のような大型の鳥から、コアエ・ケア(シラオネッタイチョウ)やコアエ・ウラ(アカオネッタイチョウ)、ウアウカニ(オナガミズナギドリ)のような小型の鳥まで多くの種類が生息します。生息環境が交錯している場合は、餌を奪ったり、縄張りを主張するような場合もあります。
淡水を中心に生息する鳥には、コロア(ハワイガモ)、アラエ・ウラ(バン)、アラエ・ケア(ハワイオオバン)、アウクウ(ゴイサギ)などのほか、タロイモの水田ではアレクウ・カウ・ピピ(アマサギ)やアエオ(クロエリセイタカシギ)を見かけます。
シラオネッタイチョウ(カウアイ島ケプヒ岬)
内陸の鳥
猛禽類にはイオ(ハワイノスリ)やプエオ(コミミズク)といった在来の鳥のほか、メンフクロウやミサゴ、ヨタカなどがいずれも少数ながら定着しています。
山鳥では、大型のものにミヤマハッカンやシチメンチョウ、クジャクなどがいます。中型の鳥としてはクロガオシャコやイワシャコ、日本のキジなどが見られます。ハワイ固有種で絶滅の危機に瀕している山鳥はネネを除けばいずれも小型です。アパパネやイイヴィ、アマキヒなどのハワイミツスイ類、エレパイオなどが知られます。郊外から山間にかけて広く生息するメジロは、日本では希少種ですが、ハワイでは生息数が多いため在来の鳥の環境を荒らしています。
街中や郊外で見られる鳥のほとんどは外から持ちこまれました。街中でとくに良く見られる鳥には、カバイロハッカ、イエスズメ、チョウショウバト、カワラバト、メキシコマシコなどがいます。郊外の鳥で良く見られる鳥は、ショウジョウコウカンチョウ、キバシコウカンチョウ、コウカンチョウ、メジロ、カエデチョウ、キンノジコ、アカハラシキチョウ、シリアカヒヨドリなどです。
メジロ(ハワイ島キラウエア火山)
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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