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2015.05.16

ハワイアンキルトに使われる植物

ハワイアンキルトのデザインは大自然の中の植物

伝統的なハワイアンキルトのデザインは、1枚の大きな生地を8つに折り、8枚の生地を重ねてカットし、広げたシンメトリーです。その模様は主に自然の植物、花、葉、実などから作られています。これは昔も今も変わってはいません。

 

ハワイの文化は、自然や植物と密接な関係にあり、ハワイの文化や歴史を知る上で、欠かせないのが植物です。もともとハワイに生息していた固有種の植物、ポリネシアから移住してきたポリネシア人が持ち込んだ植物など、ハワイの植物には他の国や土地では使わない分類の方法があります。おおまかに分けると以下3種の植物に分けられます。

 

1つめは外来種です。外国から持ち込まれた植物の事を指し、例としてプルメリア、パイナップル、ハイビスカス、ホワイト&イエロージンジャー、ブーゲンビリア、エンジェルトランペット、アンスリウム、クラウンフラワー、ヘリコニア、ロケラニローズ、モンステラ、オーキッド、パパイヤ、プロテア、ティアレなどハワイアンキルトではよく使われている植物がたくさんあります。

ハワイの固有種と思われがちなプルメリア

ハワイの固有種の植物には2種類あります。

 

最初はEndemic/エンデミック。人間が住む前から生息していた植物のうち、ハワイ諸島でしか生息しない植物のことを指します。例としては、オヒア・レフア、コア、ケキオ・ケオ・ケオ(白いハイビスカス)、カウナオア、マオ・ハウ・ヘレ(ハワイ州花の黄色いハイビスカス)、ナウパカ・クアヒヴィ(山ナウパカ)、ナイト・ブルーミング・セレウスなどがあります。

ハワイ固有種のエンデミック、マオ・ハウ・ヘレ

次はIndigenous/インディジェネス。人間が住む前から生息していた植物のうち、ハワイ諸島を含む限られた土地で生息する植物のことを指します。例としては、ハウ、ハラ、イリマ、ナウパカ・カハカイ(海ナウパカ)、パラパライ(シダの一種)パーウー・オ・ヒイアカ、ポーヒナヒナなどがあります。

 

ハワイ固有種のインディジェネス、パラパライ

そして3つめは伝統植物(カヌープラント)と呼ばれ、ポリネシア人がポリネシアから持ち込んだと言われる植物を指します。例としては、タロイモ、パンノキ、ティ、ククイ、サトウキビ、ココヤシ、バナナなどがあります。

キルトのデザインを描く時やキルトの作成には、このような知識はあまり関係ないかもしれませんが、ハワイアンキルトは作成後、しまっておくのではなく、なるべく色々な人に見ていただくことも大切です。

 

その時に、1枚1枚のキルトが持つ、デザインやキルティングにまつわるストーリーを伝えていくこともハワイアンキルト作りと永続にはとても重要です。長年、ハワイの人達が伝え、育くんできたキルトの文化、歴史を受け継ぎ、次の世代に繋いでいくことが私たちの重要なミッションの一つだからです。デザインの植物について何も知識がないのは、ハワイの伝統アートであるハワイアンキルトを作る上、とても悲しいことになります。

 

また、植物、ハワイの神々、土地にまつわる伝説なども、キルトデザインには大きく影響したと言われています。

 

たとえばタロイモはポリネシアから持ち込まれた伝統植物です。そしてハワイの人の主食(ポイ)でもあります。ハワイの人達はタロイモを自分達の祖先だと思っています。ハワイの人々の生活に密接した植物は、ハワイの人々の命の源にもなっています。

 

ハワイアンキルトのモチーフとして、植物以外にも使われたものは、歴史的な出来事、宗教的な要素(フラッグキルトなど)、アーティスティックなもの、抽象物などがあります。ハワイアンキルトのデザインとして、タブーとされたのは、四足の動物や人間などのデザインです。これらはデザインに描き、キルトをしていくうちに、魂がキルトに宿ってしまうとされ、縁起が悪い物としての対象でした。また、人間のデザインなどは夜中にキルトから抜け出して、徘徊すると言われました。

 

昔から完成したキルトには、植物の名前の他、メッセージ性のあるパーソナルなタイトルが付けられました。主にハワイ語のタイトルが多いですが、作り手キルターの想い、また、キルトを作った相手に対する気持ちなど、色々な思いを込め、タイトルを付けたものが多く、叙情豊かなキルトのタイトルは今でも多く残されています。

ポリネシアから持ち込まれた伝統植物のタロイモ

 

補足事項

Hawaiian Quilt Masterpieces, Robert Shaw.  Hugh Lauter Levin Associates, Inc.
ハワイアンキルト- パターンとステッチの魅力、藤原小百合アン。誠文堂新光社

  • 藤原 小百合 アン
    Anne Sayuri Fujiwara
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。メリーランド大学学士号取得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。ハワイ、日本でのレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。15年以上、パシフィックリゾートの「キルトパラダイス」(http://www.holoholo.world/kawaraban/category/quilt/)を連載中。 日本でハワイアンキルト本を数冊出版。2006年よりホノルルフェスティバルにおける伝統的ハワイアンキルト展を毎年開催。2013年よりイオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを始め、現在ハワイ在住31年目。

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