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所用時間5min
2020.05.22
カルア(カールア)ピッグ
ここがポイント
カルア(カールア)ピッグの名の由来や古代での作り方、どのような場面で食べられたのかなどを詳しく学びます。
●使用している歴史的な写真の中に、豚のリアルな調理過程が写った写真がありますので、閲覧の際はお気をつけください。
伝統的なハワイアンフードに舌鼓を打ちながら、ステージで繰り広げられるフラやファイアーダンスなどのショーを楽しめるルアウ。現在、専門の施設やホテルなどで行われ、多くの人々を惹きつけています。このルアウで供される食事のメイン料理は、豚を丸ごと蒸し焼きにしたカルアピッグ(カールアピッグ)。そのダイナミックな姿に驚くと同時に、その肉の柔らかさやジューシーさ、美味しさにも驚かされます。カルアピッグはルアウだけでなく、2、3食分の量でパックされたものがスーパーで売られていたり、プレートランチのお店で簡単に手に入るようになっていますが、古代ハワイでは、カルアピッグはどのように食されていたのでしょうか。
ハワイにおける豚(puaʻa)の重要性
(アウトリガー・ワイキキ・ビーチ・リゾート内展示より)
豚は犬や鶏と共に、ハワイへの初期の移民が持ち込んだもので、ハワイの地で養殖し、数を増やして使っていた動物です。ハワイの文化において、豚は重要な役割を果たしており、例えば、神の化身として神話にも登場します。Kamapuaʻaは豚の半神で、ハンサムな人間や魚の姿にも変身できますが、その魚とはハワイ州の州魚でもあるHumuhumunukunukuapuaʻa(「豚のような鼻を持つトリガーフィッシュ(タスキモンガラ―カワハギの仲間)」の意味)。長い名前の最後に、豚の意味であるpuaʻaが入っています。puaʻaが入った語で忘れてはいけないのが、Ahupuaʻa、ハワイにおける土地区分を表す言葉です。土地の境界には、石を積み上げた(ahu)ところに、ククイの木を彫って作られた豚(puaʻa)の頭が置かれていました。これは、首長が税を徴収する際に、豚が税として土地の境界に置かれたことによります。さらに、豚は神へのお供え物としても用いられ、ヘイアウの偶像(Kiʻi)や、家族の守護神(ʻAumākua)、カヌーを作るために選ばれた木に供えられるなど、ハワイの文化と豚は、大変深い関係にあります。
(Hawaii State Archives)
豚を食べられるのは…
このように、神話に登場したり、お供え物の一つとして大切に扱われる豚は、古代からハワイの地で養殖され、食用としても用いられてきました。しかし、古代において豚を食べられるのは10歳~11歳*以上の男性のみ。食べる物に関しては、女性には多くの制限があり、豚は食べてはいけないということがカプ(禁止事項)で決められていました。このカプは、1819年まで続きました。
*食事は男女分かれてすることが決まりでしたが、幼い男の子は母親と食事をすることになっていました。10、11歳位で男性の食卓に移りました。
男性のみが食べられるとはいえ、毎日の食卓に豚肉が登場するわけではありません。祝宴の際や、お供えとして捧げた豚を宗教儀式の後で食べるなど、豚を食べる機会はそれほど頻繁ではありませんでした。
豚の調理法
(Hawaii State Archives)
古代ハワイでの調理には、主に土を掘って作られたオーブン、イム(imu)が使われます。穴の底で火を起こし、石を敷き詰めて石を焼きます。数時間後、石が十分熱せられた後に、バナナの葉やティの葉が敷き詰められ、食材がその上に置かれ、石の熱を使って蒸し焼き(kālua)にします。カルアピッグの名は、イムを使って蒸し焼きにするという意味のkāluaによるものです。
(Hawaii State Archives)
豚を調理するということになると、肉は切らずに丸ごと調理されます。まずは皮膚に残る毛を、目の粗い溶岩の石でこすり取り、内臓を取りだします。肉に塩を刷り込み、内臓を取った後にできた空洞に焼いた石が詰め込まれ、小さめの豚はイムの中に入れられます。そして上から多くの葉がかぶせられ、数時間置かれます。大きな豚になると、調理用に作られたカパ(kapa、コウゾの木の繊維を叩いて伸ばし作った布にあたるもの)を巻き、そのまま置かれます。この場合、熱い石が接していた内部の方に火が通るため、皮に近い部分は火が通っていない場合もあります。その際は、その部分は切り取られ、再度イムの中で火を通します。
さて、イムから取り出された蒸し焼きにされた豚(Kālua puaʻaまたはPuaʻa kālua)は、古代では男性に供されましたが、現代のハワイでは、男女問わず、誰でもその美味しさを気軽に楽しめます。モールのフードコート、プレートランチ屋さん、多くのカフェやレストランで、カルアピッグを含め伝統的なハワイアンフードが扱われ、さらにお店によって、カルアピッグに独自の工夫を凝らした料理も登場しています。現在でも、カルアピッグが作られる際は古代と変わらず、基本的にハワイアンソルトのみが使われ、豚本来の味を活かしたシンプルな味。サンドイッチやパスタの具材として、またはピザのトッピングとして、アイデア次第でそのアレンジ方法は無限に広がります。現代の人々の食生活を豊かに彩るカルアピッグ。古代ハワイの食文化をぜひ身近に感じてみてください。
伝統的なハワイアンフードに舌鼓を打ちながら、ステージで繰り広げられるフラやファイアーダンスなどのショーを楽しめるルアウ。現在、専門の施設やホテルなどで行われ、多くの人々を惹きつけています。このルアウで供される食事のメイン料理は、豚を丸ごと蒸し焼きにしたカルアピッグ(カールアピッグ)。そのダイナミックな姿に驚くと同時に、その肉の柔らかさやジューシーさ、美味しさにも驚かされます。カルアピッグはルアウだけでなく、2、3食分の量でパックされたものがスーパーで売られていたり、プレートランチのお店で簡単に手に入るようになっていますが、古代ハワイでは、カルアピッグはどのように食されていたのでしょうか。
ハワイにおける豚(puaʻa)の重要性
(アウトリガー・ワイキキ・ビーチ・リゾート内展示より)
豚は犬や鶏と共に、ハワイへの初期の移民が持ち込んだもので、ハワイの地で養殖し、数を増やして使っていた動物です。ハワイの文化において、豚は重要な役割を果たしており、例えば、神の化身として神話にも登場します。Kamapuaʻaは豚の半神で、ハンサムな人間や魚の姿にも変身できますが、その魚とはハワイ州の州魚でもあるHumuhumunukunukuapuaʻa(「豚のような鼻を持つトリガーフィッシュ(タスキモンガラ―カワハギの仲間)」の意味)。長い名前の最後に、豚の意味であるpuaʻaが入っています。puaʻaが入った語で忘れてはいけないのが、Ahupuaʻa、ハワイにおける土地区分を表す言葉です。土地の境界には、石を積み上げた(ahu)ところに、ククイの木を彫って作られた豚(puaʻa)の頭が置かれていました。これは、首長が税を徴収する際に、豚が税として土地の境界に置かれたことによります。さらに、豚は神へのお供え物としても用いられ、ヘイアウの偶像(Kiʻi)や、家族の守護神(ʻAumākua)、カヌーを作るために選ばれた木に供えられるなど、ハワイの文化と豚は、大変深い関係にあります。
(Hawaii State Archives)
豚を食べられるのは…
このように、神話に登場したり、お供え物の一つとして大切に扱われる豚は、古代からハワイの地で養殖され、食用としても用いられてきました。しかし、古代において豚を食べられるのは10歳~11歳*以上の男性のみ。食べる物に関しては、女性には多くの制限があり、豚は食べてはいけないということがカプ(禁止事項)で決められていました。このカプは、1819年まで続きました。
*食事は男女分かれてすることが決まりでしたが、幼い男の子は母親と食事をすることになっていました。10、11歳位で男性の食卓に移りました。
男性のみが食べられるとはいえ、毎日の食卓に豚肉が登場するわけではありません。祝宴の際や、お供えとして捧げた豚を宗教儀式の後で食べるなど、豚を食べる機会はそれほど頻繁ではありませんでした。
豚の調理法
(Hawaii State Archives)
古代ハワイでの調理には、主に土を掘って作られたオーブン、イム(imu)が使われます。穴の底で火を起こし、石を敷き詰めて石を焼きます。数時間後、石が十分熱せられた後に、バナナの葉やティの葉が敷き詰められ、食材がその上に置かれ、石の熱を使って蒸し焼き(kālua)にします。カルアピッグの名は、イムを使って蒸し焼きにするという意味のkāluaによるものです。
(Hawaii State Archives)
豚を調理するということになると、肉は切らずに丸ごと調理されます。まずは皮膚に残る毛を、目の粗い溶岩の石でこすり取り、内臓を取りだします。肉に塩を刷り込み、内臓を取った後にできた空洞に焼いた石が詰め込まれ、小さめの豚はイムの中に入れられます。そして上から多くの葉がかぶせられ、数時間置かれます。大きな豚になると、調理用に作られたカパ(kapa、コウゾの木の繊維を叩いて伸ばし作った布にあたるもの)を巻き、そのまま置かれます。この場合、熱い石が接していた内部の方に火が通るため、皮に近い部分は火が通っていない場合もあります。その際は、その部分は切り取られ、再度イムの中で火を通します。
さて、イムから取り出された蒸し焼きにされた豚(Kālua puaʻaまたはPuaʻa kālua)は、古代では男性に供されましたが、現代のハワイでは、男女問わず、誰でもその美味しさを気軽に楽しめます。モールのフードコート、プレートランチ屋さん、多くのカフェやレストランで、カルアピッグを含め伝統的なハワイアンフードが扱われ、さらにお店によって、カルアピッグに独自の工夫を凝らした料理も登場しています。現在でも、カルアピッグが作られる際は古代と変わらず、基本的にハワイアンソルトのみが使われ、豚本来の味を活かしたシンプルな味。サンドイッチやパスタの具材として、またはピザのトッピングとして、アイデア次第でそのアレンジ方法は無限に広がります。現代の人々の食生活を豊かに彩るカルアピッグ。古代ハワイの食文化をぜひ身近に感じてみてください。
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ロバーツさゆりSayuri Roberts担当講師
東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。
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