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2016.05.12

有害植物

 有害植物とは外来の植物のうち、繁殖力の強いものや、在来の植物を駆逐する植物を指します。ハワイの原自然を形成している動物や植物は、人間や動植物の侵入によって破壊され続けています。ハワイは絶海の孤島であるため、動植物の固有率が高く(交雑種が少なく)、変化に弱いという特徴があります。外来植物の侵入から受けるダメージは想像以上に大きいのです。ハワイ州はアメリカ合衆国全体の500分の1ほどの面積しかありませんが、絶滅の危機に瀕している動植物は全体の3分の1を占めるほどです。

深刻度の高い植物

 有害植物のなかでもハワイの自然にとってとくに深刻な被害を与えるものに、カユプテ、ランタナ、コア・ハオレ、ミコニア、ストロベリー・グァバ、アフリカン・チューリップ・ツリー、イボタノキ、クリスマスベリーなどがあります。これらは「世界のワースト100植物」にリストアップされています。

多量の実をつけるストロベリーグァバ

 カユプテはフトモモの仲間で、ユーカリの一種と同じように樹皮が薄く剥がれるため、ペーパー・バーク・ツリーとも呼ばれます。非常に大きくなり、周囲に枝を伸ばすので在来の植物は駆逐されてしまいます。ランタナはわずか数年で周辺の景観を変えるほど広く繁殖します。コア・ハオレ(ハオレ・コア)は乾燥地帯の緑化に利用されるという点では有用木ですが、枝にサヤをつけたまま密集して広がるので、それ以外の植物は生長を阻害されます。ノボタン科のミコニアは巨大な葉が特徴で、山間部を中心によく目にします。近縁のシコンノボタン、サンゴノボタンなどのノボタン科の植物はいずれも強い繁殖力があるため、輸入禁止の措置が取られています。ストロベリー・グァバは(コモン)グァバの近縁で、赤く美味しい実をつけます。野鳥やブタなどに食べられ、種子が拡散して周辺に広がります。木の生長が早くきわめて密生して生えるので、いったんストロベリーグァバの森ができてしまうと、その他の植物はことごとく駆逐されてしまいます。アフリカン・チューリップ・ツリーはハワイ島ヒロの街路樹として知られていますが、いまでは諸島各地で見られるようになりました。イボタノキはマウイ島などの原野で見らます。クリスマスベリーはハワイ島やカウアイ島の低山を中心に分布域を広げ、在来の植物を駆逐しています。

樹皮が紙のようにはがれるカユプテ(ペーパーバークツリー)

 ハワイでは先に挙げたものの他にも、数多くの有害植物があります。いずれも繁殖力が強く、ハワイ固有の植物を駆逐してしまいます。なかでもバンブー(真竹)、ホワイトジンジャー、イエロージンジャー、カヒリジンジャー、ウチワサボテン、バナナポカ、パンパス・グラス、スズメノコビエ、ビカクシダ、オートグラフ・ツリー、ラッツ・テイル、ビロウドモウズイカ、センダン、アサヒカズラ、ウッド・ローズ、レッド・マングローブ、コモン・グァバ、ナンヨウリュウビンタイ、ハリエニシダなどは要注意とされています。

 原因が不明の問題もあります。ラッピド・オヒア・デスと呼ばれるオヒアの枯死現象がハワイ島で起こり、少しずつ被害地域を広げています。原因は昆虫や寄生植物など外来動植物の影響によるものなのか、あるいはウィルスや気候変動の影響なのかについては判明していません。
 

環境保護への取り組み

 今日、土地・自然資源局をはじめ、トレイルと周辺の自然を管理するナー・アラ・ヘレ、国立公園局、オーデュボン協会やシエラクラブなどの環境保護団体、ネイチャーコンサーバンシーのような第三セクター、ハワイ大学などの教育機関、さらにはボランティアで活動する個人や、地方自治体などが、それぞれの立場で日々、これら有害植物の駆除に取り組んでいます。

数年で周辺数キロメートルに渡って拡散したシコンノボタン

主な有害植物

African tulip tree / カエンボク/ Spathodea campanulata
Black wattle / モリシマアカシア / Acacia mearnsii
Brazilian pepper tree / サンショウモドキ / Schinus terebinthifolius
Cogon grass / チガヤ(アランアラン) / Imperata cylindrica
Cluster pine / フランスカイガンショウ / Pinus pinaster
Erect prickly pear / オプンティア・ストリクタ(ウチワサボテンの一種) / Opuntia stricta
Fire tree /ミリカ・ファヤ(ヤマモモの一種) / Myrica faya
Giant reed / ダンチク / Arundo donax
Gorse / ハリエニシダ / Ulex europaeus
Hiptage / ホザキサルノオ / Hiptage benghalensis
Japanese knotweed / イタドリ / Polygonum cuspidatum
Kahili ginger / キバナシュクシャ / Hedychium gardnerianum
Koster's curse / クリデミア・ヒルタ(ノボタン科クリデミアの一種) / Clidemia hirta
Kudzu / クズ / Pueraria lobata
Lantana / ランタナ / Lantana camara
Leafy spurge / ハギクソウ / Euphorbia esula
Leucaena / ギンネム(ギンゴウカン) / Leucaena leucocephala
Melaleuca / カユプテ / Melaleuca quinquenervia
Mesquite / プロソピス・グランドゥロサ(プロソピスの一種) / Prosopis glandulosa
Mexican creeper / アサヒカズラ / Antigonon leptopus
Miconia / ミコニア・カルヴェセンス(ミコニアの一種) / Miconia calvescens
Mile-a-minute weed / ミカニア・ミクランサ(ツルギクの一種) / Mikania micrantha
Mimosa / ミモザ・ピグラ(オジギソウの一種) / Mimosa pigra
Mule's foot fern (giant fern) / ナンヨウリュウビンタイ / Angiopteris evecta (Marattiaceae)
Privet / リグストルム・ロブストゥム / (イボタノキの一種) / Ligustrum robustrum
Pumpwood / セクロピア / Cecropia pletata
Purple loosestrife / エゾミソハギ / Lythrum salicaria
Quinine tree / アカキナノキ / Cinchona pubescens
Shoebutton ardisia / アルディシア・エリプティカ(ヤブコウジの一種) / Ardisia elliptica
Siam weed / クロモラエナ・オドラタ / Chromolaena odorata
Strawberry guava / ストロベリーグアバ / Psidium cattleianum
Tamarisk / タマリクス・ラモシッシマ(ギョリュウの一種) / Tamarix ramosissima
Wedelia / ミツバハマグルマ / Wedelia trilobata
Yellow Himalayan raspberry / キミノヒマラヤキイチゴ / Rubus ellipticus
 

各島の主要な有害種

カウアイ島
 ランタナ、バナナポカ、シコンノボタン:ワイメア渓谷
 ストロベリーグァバ、クリスマスベリー:ノウノウ山
ハワイ島
 ハリエニシダ、ビロウドモウズイカ、ヒメツルソバ:マウナケア南麓と北東部
オアフ島
 バンブー、イエロージンジャー:コオラウ山脈
マウイ島
 モリシマアカシア、バンブー:ハレアカラ南西部

 

 

※トップ画像は、枯れたサヤに覆われたコア・ハオレです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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