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所用時間5min
2014.03.06

ハワイ諸島の誕生とプレートの移動

北西に向かって移動する島々と、火山島の一生

  • ハワイ諸島は地下数キロメートルにあるマグマ溜まり(ホットスポット)から上昇し、噴出した溶岩によって造られた。島は決してひとつところにとどまることなく、北西へと移動を続ける。島の年齢は移動距離を知ることで比較的簡単に推測することができる。島は海上に出現してからもつねに表情を変える。
     
  • ハワイ島火山国立公園内に伸びるチェーン・オブ・クレーターズ・ロードにはクレーターの展望台があるので、他のクレーターとの違いを観察できる。


地理:ハワイの立地と特徴

ハワイ島のキラウエア火山にはいくつもの小クレーターが連なり、その半分ほどには展望台もあります。意外に思えるかもしれませんが、これらのクレーターを通じてハワイ諸島の誕生の仕組みを学ぶことができます。
 クレーター群の数キロメートル地下には、ホットスポットと呼ばれるマグマ溜まりがあります。地球内部のマントルから上昇した一部のマグマが地殻付近に滞留したものです。ここから地殻の亀裂を通じて地表に噴出したものを溶岩と呼びます。溶岩は先ず海底に出現し、少しずつ盛り上がりながら成長して、ついには海上に姿を現わします。主要ハワイ諸島はこのようにして出現した火山島です。


しかし島々は初めから今日のような形をしていたわけではありません。
カウアイ島の年齢(海上に顔を出してからの年数)は約600万年前後です。この島はカヴァイハエという山を中心に、東部の山塊が沈降と隆起を繰り返しながら今日の姿となりました。


オアフ島(同350万年前後)はカネオヘを中心とした火山と、南西部のワイアナエの辺りを中心とした火山が、溶岩を噴き出して造り上げた姿です。ワイアナエの北東部に出現したカネオヘの火山が島を押し広げ、今日のコオラウ山脈を残しました。


マウイ島(同150万年前後)は現在のマウイ郡が管轄するマウイ島、モロカイ島、ラナイ島、カホオラヴェ島の4つがひとつの大きな島(マウイ・ヌイ)だった時期があります。その後、浸食を受けて島は分裂し、今日の形になりました。


ハワイ島(同50~60万年前後)はもっとも新しい島で、いまも噴出する溶岩のせいで少しずつその形を変えています。この島の年齢は北西のコハラ半島を基準にしています。いまだ溶岩が噴き出し、海上に新しい土地を造り続けるカウ地区はまだゼロ歳と言ってよいでしょう。
これらの島々は地底のマグマから溶岩の供給を受けている間は成長を続けますが、供給を断たれると浸食がはじまります。ではなぜ供給を断たれるのでしょうか?


プレートの移動
ハワイ島最古の地域は北西端のコハラ半島ですが、他の島でも北西側の年齢は古くなります。なぜ北西側は古いのでしょう?
それは、ハワイ諸島の乗る太平洋プレートが北西方向に移動しているためです。このプレートは年に6cmから9cmほどの割合で少しずつ北西側に移動しています。ハワイの島々は、地底のマグマ溜まり(ホットスポット)から溶岩の供給を受けていた出現します。しかし、プレートとともに島は移動し、少しずつホットスポットから遠ざかります。そして遂にはマグマの供給を絶たれてしまいます。


島の移動をわかりやすくするように1年に10cm動くとしましょう。10年では1m移動することになります。さらに千倍すると1万年で1kmになり、100万年では100kmということになります。ハワイ島の中心からマウイ郡4島の中心までは約200km、ハワイ島からオアフ島までは約340km、カウアイ島までは約500km、北西ハワイ諸島の最西端に近いミドウェー島まで約3200kmです。これらはプレートの移動速度にほぼ合致しています。


ハワイ諸島とその先に連なる北西ハワイ諸島はほぼ直線上に並びます。このことからすべての島は、ハワイ島の南東部にあるホットスポットから噴き出した溶岩によって誕生した火山島であることもわかります。


ではハワイの島々はやがて日本に到達するのでしょうか? ハワイ島の中心からカウアイ島を経てミドウェーまでをひとつの線で結ぶと、その延長線上に日本があります。しかし、日本とハワイを結んだ中央付近より少し東側で島の流れは北北西へと曲がっています。天皇海山列と呼ばれるこれらの島々はすでに浸食を受けて海の底深くにその痕跡を残すだけですが、ハワイ諸島と同じホットスポットから溶岩の供給を受け、かつては洋上に顔を出していたはずです。天皇海山列はなぜ方向を変えたのでしょうか? 変更はおよそ7000万年前とされますが、この時期を境に、太平洋プレートの移動方向が変化したためです。変化は「プリューム」という地球内部の現象によって引き起こされましたが、ハワイ諸島の話からは少し離れますのでこの辺にしておきましょう。


ハワイ諸島が遠い未来に日本列島のすぐ近くに来るかどうかは不明ですが、太平洋プレートは日本とハワイを結ぶ1枚の「面」ですから、プレートの移動や地震、ツナミなどに深く関わっていることは確かです。



再びクレーターの話

最初の話に戻りましょう。ハワイ島のキラウエア火山には多くのクレーターがあり、南東方向へと連なっています。上空からこれを見ると鎖が伸びているように見えることから、チェーン・オブ・クレーターズという名前が付いています。これまで地球上におけるハワイ諸島の位置関係についてお話ししましたが、時間と空間をミニチュアにしたものが、これらのクレーター群と言えます。南東のクレーターが黒々としていて、まだ噴煙を上げているものがあるのに対し、北西のクレーターは植物が侵入し、クレーターの形が不鮮明のものが多くなります。クレーターの年齢差は島々と比較するとごくわずかですが、それでも時間の経過とともに地上の自然は変化します。

ハワイ諸島から天皇海山列までの構成図

キラウエア火山に連なるクレーター群
近藤純夫

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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