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所用時間5min
2015.05.18

貿易風がつくり出す自然

島を特徴づける貿易風の働き


降雨と気温


ハワイの自然がなぜユニークなのかと言えば、いずれの大陸にも接することなく、最短の島からでさえ3000キロメートルも離れた絶海の孤島であるためです。この特殊な地理的環境がハワイ諸島に根づいた動植物に独自の進化の道を与えました。


春から秋にかけてハワイ諸島を吹き抜ける貿易風は特徴ある景観をつくり出しました。主要4島(カウアイ、オアフ、マウイ、ハワイ)では島の中心部に位置する山岳の北東に多くの雨を降らせ、南西部に乾燥した風を吹かせました。その結果、北東部には風雨や波浪による深い浸食と森が誕生し、南西部や海抜2000メートル以上の高地にはなだらかで乾燥した土地が広がります。


秋から冬にかけて吹くコナ・ウインドは乾燥地帯にも雨をもたらすことがありますが、北東部ほどの降雨量ではありません。気温は100メートルにつき0.6度下がりますから、3000メートルの地点では摂氏で18度下がります。冬季の最低気温はホノルルやカイルア・コナでも摂氏18度前後になりますから、山頂は氷点下となります。したがって標高3000メートルを超える高地では降雪が見られます。ハワイ島のマウナ・ケア(4205m)とマウナ・ロア(4169m)では、年間降水量(350~400mm)のほとんどが雪として降り、冬に根雪となることもあります。年間を通じ、ほとんど雨は降りません。マウイ島のハレアカラ(3055m)でも降雪は見られますが、たいていは数日で溶けてしまいます。

ハワイ島の西海岸に到達した溶岩流

 

空から見下ろす風景


飛行機でハワイ諸島を横断すると気づくことがあります。南東のハワイ島では黒々とした溶岩の広がりと、4000メートルを超す巨峰がつくる壮大でなだらかな地形です。北西のカウアイ島では黒々とした溶岩大地を見つけるのは難しく、代わりに鬱蒼とした森林と深い渓谷が広がります。島の年齢(地質年代)の違いによって、溶岩に覆われた島が次第に植物や風雨波浪の浸食を受け、見た目を変えて行く様子がよくわかります。2つの島の間に点在するその他の島々は、その中間的な様相を示します。


しかし、注意深く観察すると、島の内部でも場所によって色合いや形状が異なることに気づかされます。各島の北東部に森や渓流が多く南西部に少ないこと、北東部に断崖が多く南西部に少ないことなどです。


他島の影響を受ける島もあります。カウアイ島の西に位置するニイハウ島や、マウイ島の南に位置するカホオラヴェ島のような小さな島は貿易風の通り道の下流に位置するため、つねに乾燥した風が吹きます。表土は激しい浸食を受け続け、広範囲に赤土が露出しています。ニイハウ島にはハワイ州最大と2番目に大きな湖がありますが、いずれもほとんど干上がっています。パイナップル畑として使用されていたラナイ島の高地もマウイ島西マウイの山々で雨を落とした風が吹くため、同様の光景が広がります。

カホオラヴェ島ではキアヴェの木を植え、土嚢を並べて土壌の崩壊を防いでいる

リゾート地のジレンマ


雨の多い土地では植物が繁殖しますが、雨が多い土地でも、溶岩が流れて間もないところでは植物は生育しないし、標高3000メートル以上の高所でも植物はほとんど見られません。各島の南西地域のように、降水量の少ない土地では海岸から山地に至るまで乾燥に強い植物が分布するのみです。


ところが、雨が少ないはずの南西部に位置するワイキキやカイルア・コナには緑が広がります。リゾート地ではスプリンクラーなどで定期的に散水することで緑を維持しているからです。散水を止めると数週間から数ヶ月で植物は枯れ、荒野に逆戻りします。植物の生育が難しい乾燥地帯に大規模なリゾート地が多いのは、短期の滞在が多い観光客が青空の下で過ごす確率を高くし、滞在者のイメージをアップしてもらうためです。


雨が少なくても地下深くに根を伸ばし、乾燥に耐える植物があります。キアヴェやハオレ・コアがよく知られます。これらの植物は土砂崩れを防いだり、緑化を早めるために使用されます。ホノルルのダイヤモンドヘッドをはじめ、乾燥が進むニイハウ島やカホオラヴェ島でも広範囲に植林されています。

ハワイ島ワイコロア・リゾート。池も芝生も、手前の溶岩の上に造られたものだ

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家。写真家。 ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。フラ・ミュージアム(スパ・リゾート・ハワイアンズ)アドバイザー。アロハ・カワラ版(パシフィック・リゾート)アドバイザー。国内外で各種のカルチャー講座を主催。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『アロハ検定オフィシャル・ブック』(共著・ダイヤモンド社)、『フラの本』(講談社)、『ハワイアンガーデン』、『ハワイ・ブック』、『ハワイ・トレッキング』、『ハワイ諸島の自然』(以上、平凡社)、『おもしろハワイ学』(JTB)、『裏ハワイ読本』(共著、宝島社)など。訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)、『ナショナル・ジオグラフィック 荒ぶる地球』(岩波書店)など。フェイスブックで毎日ハワイの小咄と写真を発信している。 「Facebook」https://www.facebook.com/kondo.sumio

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