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2015.12.22

モオ伝説2「モオ族の最高位、モオイナネア」「真珠湾から真珠が消えた理由」

大とかげモオを神とみなす神話も多々

モオ族の最高位、モオイナネア

邪悪な大とかげとしてのイメージが強いモオですが、そもそもは神々の国からやってきた半神(クプア)です。この世に最初に舞い降りたモオはモオイナネアと呼ばれ、その経緯は神話「金色の雲の女神、ケアオメレメレ」の中に描かれています。

物語の中でモオイナネアは四大神の兄弟であり、四大神と同等、またはそれ以上の高位の神として登場。以下、「ケアオメレメレ」から抜粋します。

天上の神々の島で神クーと女神ヒナの子供が生まれた時、クーの兄弟であるカネ神とカナロア神は、子供を地上で養育することにしました。モオイナネアもまた、子供の養育に関わっていました。

そんなカネとカナロアが子供を育てるために選んだのが、オアフ島ヌウアヌ渓谷。そして神々がこの世に降りて来た後、モオイナネアも、モオ族を率いてヌウアヌ渓谷に降り立ちました。モオイナネアはヌウアヌ渓谷に落ち着き、その他のモオ族は、オアフ島ノースショアのワイアルア地方からオアフ西部のエヴァ地方にかけて住みつきました。

モオイナネアが住んだヌウアヌ渓谷のワオラニ

しかしある時モオイナネアは、オアフ島にモオが溢れているのを見て、ハワイ全島にモオを振り分けることに。

こうしてハワイ島からニイハウ島までにモオ族は散らばり、あるモオは邪悪な存在として、あるモオは高貴な産土神として、人間に崇拝される存在となりました。まさにハワイ中にモオ伝説が残るのは、こんな理由からです。
 

真珠湾から真珠が消えた理由

モオイナネアがヌウアヌ渓谷に住んでいた頃、真珠湾にはカネクアアナというモオが住んでいました。カネクアアナは真珠湾を含むエバ地方全域で崇拝されており、食糧不足に苦しむ人々はカネクアアナのためにヘイアウ(神殿)を建て、祈願。カネクアアナはその願いを聞き入れ、海に幸をもたらしてくれたのでした。

こうしてカネクアアナから恵まれた海の幸には、海老や真珠貝がありました。真珠貝は食糧になるのに加え、貝に隠された真珠も、宝物として珍重されていました。

ところがある時、真珠湾から、真珠貝がすっかり消え去ってしまいました。それには、こんな訳があります。

昔々、大切な食資源だった真珠貝には禁漁期が設けられていました。そんなある日、タブーを破った老女がいました。飢えに苦しんでいた老女は、海藻を集めている際に見つけた大きな真珠貝を、海藻の下にこっそり隠して持ち帰ったのです。

不運なことに、その一部始終を見ていた役人がいました。役人は老女の手から籠を引ったくって籠の中のものを全て海に戻し、その上で、さらに老女に罰金を求めました。

老女は、「私は夫に先立たれ、貧しく、お金なんて持っていません。どうか許してください」と懇願。しかし役人は容赦なく、老女の最後のお金を徴収して引き揚げていったのでした。

この様子を、最初から見ていたのがカネクアアナです。老女に同情し、無慈悲な役人に激怒。抗議のため、「私は全ての真珠貝を、タヒチに持って帰ることにします」と宣言しました。「あの役人の子孫が死に絶えるまで、ハワイに真珠貝は戻ってきませんよ」

そんなわけで、今もタヒチには真珠貝がたくさん生息していますが、ハワイからはすっかり消えてしまった…のだそうです。

  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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