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2014.10.08

ダミアン神父(聖ダミアン)

モロカイ島でハンセン病患者救済に尽くした19世紀の聖人

  • ダミアン神父はベルギー出身のカソリック神父。
     
  • モロカイ島のハンセン病患者隔離区で献身的に働き、自らもハンセン病で死去した。
     
  • 2009年にはバチカンで聖人の列に加えられ聖ダミアンとなった。

 

ダミアン神父はカソリック教聖心会所属の聖職者。19世紀のモロカイ島にあったハンセン病患者隔離地区で患者の救済に尽くし、自らもハンセン病で命を落とした尊い人として、ベルギー出身ではありますがハワイを代表する聖者とみなされ、尊敬されています。その功績により、2009年にはバチカンで最高位にあたる聖人に認定され、現在は聖ダミアンとしても知られます。

 

ダミアン神父は1840年、ジョセフ・デ・ブーステルとしてベルギーに生を受けました。19歳で神職に就き、1864年、24歳で宣教師としてハワイへ。ホノルル・ダウンタウンに現存するアワ・レディ・オブ・ピース大聖堂で叙階を受け(聖職位に任命され)、当初の9年間はハワイ島で布教に当たりました。その後1873年に自ら志望して、モロカイ島カラウパパに赴任しています。

 

当時モロカイ島カラウパパには、人々が寄りつかないハンセン病患者の居住区がありました。今でこそハンセン病は治療可能ですが、当時はまだ死の病。伝染病、しかも容貌が侵されて死んでいく病いとして、人々の恐怖の対象だった時代でした。カラウパパの居住区にはその頃700人が強制収用されていましたが、病人を診る医者も看護婦もおらず、船による他島からの食べ物の支給も最低限。患者達は絶望の中、ただ死ぬのを待つような状態だったと言っても過言ではありません。

ダミアン神父が暮らしたモロカイ島のカラウパパ居住区
(Photo Courtesy of Hawai‘i State Archives)

宣教師グループの一員として、一度カラウパパ居住区を訪れたダミアン神父はそんな状況を見かね、自ら常住の宣教師に志願。患者の傷の手当をしたり、子供達のために学校を作り教会や住居を患者とともに建てるなど、宣教師としての役割をはるかに超えたあらゆる分野で、献身的に働きました。死の病いに侵され世間から見捨てられた状態だった人々に、ダミアン神父は再び希望と、人間としての尊厳を与えたわけです。

ダミアン神父はまた、患者を乗せた船がモロカイ島に到着する際には必ず出向き、患者を出迎えたとか。無理やりハンセン病患者の居住区に連れてこられた患者達の恐怖は、ダミアン神父の存在によってどれほど和らいだことでしょう。 

 

文字通り患者とともに生きたダミアン神父が、やはりハンセン病にかかったのは1885年。居住区に移住して12年後のことでした。そして1889年、49歳で、短くも尊い人生を閉じています。病床にある時、故郷のベルギーに戻って治療を受ける案も提案されたそうですが、ダミアン神父は最後までほかの患者達とともにあることを希望したそうです。

ハワイ州庁舎に飾られているダミアン神父像

その功績は世界中に知られ、今もハワイやベルギーで深く敬愛されているダミアン神父。たとえば1967年、ハワイ州を代表する2人の偉人の銅像がアメリカの首都ワシントンDCに送られることになった時、州議会がまず選んだ偉人が、ダミアン神父でした(次いでカメハメハ大王でした)。また故国ベルギーで、2005年に民間企業が行った「ベルギー史上、最も立派なベルギー人は」とのアンケートにも、歴代の王族や政治家をさしおいてダミアン神父が堂々の第1位に。

 

2009年2月、バチカンでダミアン神父が聖人の列に加わる儀式が行われた際も、ハワイから多数の人々が参列したほかフラ・ダンサーも同行し、神聖なフラが捧げられました。ベルギーからもアルバート2世国王夫妻、首相その他が出席し、ダミアン神父の業績と生涯を祝ったのでした。

 

なおダミアン神父ゆかりの教会などが残るモロカイ島のハンセン病患者居住区は、今では国立公園として管理され、ツアーに参加する形でのみ訪問が可能です。またホノルル・ダウンタウンのハワイ州政庁前には、ワシントンDCに送られたダミアン神父像の複製が建立され、ダミアン神父の偉業のシンボルとして人々に親しまれています。

付帯的な情報・発展情報

ワシントンDCとホノルルにある銅像は、ハンセン病にかかった姿のダミアン神父を現しているので、銅像が制作された1967年、その是非を巡って大論争が巻き起こりました。「今やハンセン病は治療可能で、昔のように容貌が侵されない。銅像は見る者にいたずらに病いへの恐怖を植えつける」「病気の状態ではなくダミアン神父の立派な姿を後世に残すべき」など、ハワイ州議会、州民、カソリック教会が激論を交わした結果、予定通り現在のものに落ち着きました。

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  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセント(水曜日担当)も務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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