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2019.02.15

カフナ

カフナ

目の前に広がる広大な海。振り向けば、ヤシの木の向こうに点々と草ぶきの家が見えます――皆さん、古代のハワイで生活していると想像してみてください。海に出たいけど、カヌーはどうやって作るんだろう?山道を歩いていて足を滑らせ骨折してしまった、どうしよう?人間が生活していく中で、自分だけではどうしても解決しない事柄はたくさんあります。そんな時に、助けの手を差し伸べてくれる人々、それがカフナ。古代ハワイでは、社会でとても大きな役割を担っていた人々です。カフナとはどんな人々だったのか、社会の中でどんなことをしていたのかを詳しくみてみましょう。

古代ハワイは階級社会

古代ハワイの人々は、しっかりした階級制度の中で生活していました。最上位にある階級はアリイ(Aliʻi)。王族、首長にあたる人々です。「神から与えられたマナ(Mana)」を持つ人々で、そのマナは親から子へと受け継がれます。マナが強ければ強い程良いという考えで、親族間での結婚が勧められていました。Aliʻiの中でも、階級はさらに細分化されていました。

Aliʻiに次ぐ階級がカフナ(Kahuna)。僧侶であり、同時に、特殊技能をマスターした技術者・専門家集団ともいえる人々で、社会にとってはとても重要で、人々からの尊敬を集めました。高僧にあたるカフナをカフナ ヌイ(Kahuna nui)と呼び、アリイのアドバイザーとして、重要な決断に深く関わっていました。

その下に、人口では最も多い、一般の人々にあたるマカアーイナナ(Makaʻāinana)と続きます。耕作、木の伐採、漁、器やラウハラマット、カパなどの生活用品を作るといった仕事に従事し、収穫した食べ物や作成した物品を税として納める役割を果たしていました。

さらにその下に、カウヴァー(Kauwā)と呼ばれる被差別民にあたる人々がいました。他の階級の人々との接触は禁止され、指定の区域で生活していました。顔に動物の形のタトゥーを彫られ、奴隷として働き、時にはいけにえとして連れていかれることもありました。

 

国政にも深く関わるカフナ

Hawaii State Archives

アリイに次ぐ位にあるカフナは、国政にも深く関わっていました。前述の通り、アリイにとってカフナはなくてはならない存在で、政治的な決定を行う際は必ずカフナに助言を求め、さらに、神はその決定を良しとしているのかを、カフナを通して確かめました。特に戦争を起こす際には、その戦争は戦いの神クー(Kū)の望むものか、勝率はどうかなどカフナとじっくり相談し、開戦となった場合は、カフナも共に戦場に赴きました。

 

カフナになるには

階級制度がしっかりしていた時代は、人々は生まれながらに階級が決まっていましたが、カフナに関しては、アリイ階級からもマカアーイナナ階級からもカフナになることができていました。アリイ直々のアドバイザーや、神殿(Heiau)を管理するような重要なポストはアリイ出身のカフナがついていましたが、一般の人々の中で、ある技能に関して特に秀でた能力のある子供は、その道のカフナになるべく幼い頃から訓練が施されました。

カフナの種類

カフナは僧侶であり、同時に技術者・専門家でもある――これは、古代ハワイアンの生活の中に、深く宗教が浸透している社会であることを物語っています。カフナは宗教儀式を行うことはもちろんですが、カヌーや神殿を作る建築家であり、医者であり、歴史を記録する人々などでありながら、すべての作業において神に祈り、神と対話し、神の許しを得ながら作業を進めていきました。

それでは、カフナはどのような技術を持つ人々なのか、例を見てみましょう。
(ハワイに関する資料にはKahunaと表記される場合と、Kāhunaとされる場合とがあります。Kahunaは単数、Kāhunaは複数のカフナとなります。こちらでは単数のKahunaに統一しています。)

 

Hawaii State Archives

 

Kahuna kālaiwaʻa カヌーをつくる
Kahuna kūʻauhau アリイの家族の歴史や、アリイに関する出来事を記憶し人々に伝える
Kahuna ʻanāʻanā 敵を死に至らしめる祈りを行う
Kahuna hoʻopiʻopiʻo 自らの体の部分を指さし、敵の同じ部分に病気や怪我をもたらす
Kahuna kilo hōkū/ Kahuna kilo lani (星、雲の様子を見て)天気予報を行う、戦争を始めるのに良い日、ヘイアウを建てるのに良い日を助言する

 

「万能薬」のノニ ©Hawaii Historic Tour LLC

 

医療関係のカフナは、現代のように専門分野別になっていました。

Kahuna lāʻau lapaʻau 一般内科・薬草の専門家
Kahuna haʻihaʻi iwi  骨折の専門家
Kahuna lomilomi   触診とマッサージの専門家
Kahuna hoʻohānau keiki  産科医
Kahuna pāʻaoʻao 小児科(乳児の特定の病気を診療・治療する)

その他、患部を目視で発見するカフナ、触診するカフナ、しこりや腫物のある子供を治療するカフナなど、役割の細分化が非常に進んでいました。古代ハワイの社会は、他の太平洋島嶼国の中で唯一、ヒーリング専門のヘイアウ(例:Keaīwa Heiau)を持ち、特に医療に関するカフナの種類が多かったことからも、医療の知識が豊富だったことが分かります。

 

高度な知識と技術を先代から学び、次世代へと着実に伝えながら、洗練された社会の営みを長く支え続けたカフナ達。もし皆さんが古代ハワイで生活していたとしても、カフナがいてくれるという安心感で、快適に過ごせそうではありませんか?

  • ロバーツさゆり
    Sayuri Roberts
    担当講師

    東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。

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